収穫した野菜や果物がもらえるオーナー制度が各地に広がる中で、「タコ」「ワカメ」といった海産物も登場した。「タコつぼオーナー制度」の場合、どのつぼに入るかは「タコ次第」。ハラハラ、ドキドキ感を味わえるというのがウケて、応募が殺到している。収穫までの一連の工程を体験できて、7キロのワカメが必ずもらえる「ワカメオーナー」も話題を集めている。
獲れる確率は10〜20%なのに応募殺到
狭い所を寝床にするタコの習性を利用したのがタコつぼ漁で、古くから行われている。熊本県天草市有明町にある小さな集落、大浦が始めた「タコつぼオーナー制度」は2009年で2年目を迎えた。
大浦地区振興会の担当者は、
「タコつぼ漁をたくさんの人に知ってもらいたいですし、オーナーになることで漁師の苦労を実感していただきたい。そんな思いで漁師さんと地域の住民と一緒にやっています」
と始めた理由を説明する。
5000円を払ってオーナーになると、タコつぼ2個を割り当てられる。つぼの投入やタコの捕獲はすべて地元の漁師さんが行うが、予約をすればオーナーが船に乗って漁を見学することもできる。タコつぼは海に投入してから、3〜4日で引き上げる。タコつぼには名前が入っているので間違えることはないという。漁の状況はブログで逐一報告、オーナーは自宅にいてリアルタイムで「収穫」を知ることができる。
漁の期間は6月下旬から9月上旬のおよそ2カ月間だ。いったい、どれだけのタコが獲れるのだろうか。
振興会の担当者は、
「09年は一番多い人で4匹獲れましたが、0匹という方もいらっしゃいました。1つぼあたりタコが獲れる確率は10〜20%程度で、5回引き上げて1回当たればラッキーという気持ちで臨んでいただいています」
といっている。
低い確率にもかかわらず、遊び感覚で楽しめるというのが人気で、応募枠50人に対し、08年は420人、09年は337人の応募があった。東京や大阪といった遠方からの応募も多い。
一方、1匹も獲れなかった人には、残念賞としてタコのストラップと希望者にはタコつぼをプレゼントしている。しかし、中には「1匹くらいタコを欲しかった」という意見もあり、振興会担当者は「次回からの課題」としている。2010年5月頃にオーナーを募集する。
ワカメの種巻き、間引き、収穫を体験
タコつぼオーナー制度は全国に広がっている。兵庫県明石市の江井ヶ島漁業協同組合はIT企業のデータウエストと協力して「タコつぼオーナー制度」を08年から始めた。5250円支払うと、7月下旬から8月上旬の期間中、4回引き上げる。09年は300の枠に1175件も応募が殺到した。自分のつぼにタコが入っているか、入っていないかわからないという「ドキドキ感がたまらない」というファンも多い。
タコ1匹につき、3000円くらいの価値があるそうだ。09年は300つぼを4回投入し、200匹獲れた。
全国でも珍しい「ワカメオーナー制度」を08年に立ち上げたのは、岩手県下閉伊郡田野畑村だ。
ワカメの収穫には1年かかる。胞子をしみこませたロープを夏に海に投入、11月頃に小さな芽が出てくる。それを太いロープに巻きつけて(種巻き)、成長を待つ。2月に「間引き」という作業を行い、一部を刈り取って日当たりを良くする。収穫は3〜4月に行われる。
種巻き、間引き、収穫と一連の工程を体験できるのが、「フル体験オーナー」で参加費は2万円だ。収穫量に関係なく、塩蔵ワカメを5キロと間引きした際に刈り取ったワカメ2キロをもらえる。08年は16人のオーナーが集まった。現地には行けないが、新鮮なワカメを食べたいという人に人気があるのは「お気軽オーナー」で、5000円で塩蔵ワカメ2キロがもらえる。
ワカメオーナー制度を運営している、「たのはた活力ある漁村づくり」推進協議会の楠田拓郎さんは、
「この地域ではおいしいワカメがコンスタントに獲れています。現場を体験していただいて、新鮮なワカメを食べていただきたいです。水産業界が衰退していく中でオーナー制度を導入することで業界を活性化したいという思いもあります」
と話している。
ワカメオーナー制度は現在参加者を募集中で、応募期間は2010年1月までを予定している。