大学生の就職活動、「就活」が早くも本格化してきた。2011年度の就職戦線も09年10月1日に本番を迎え、すでに20社、30社とエントリーを済ませた学生もいる。秋に「内内定」を出すところもあり、2年生もインターンシップの説明会に姿を見せている。深刻な不況下、就活も「先手必勝」ということらしい。
「この夏は工場で働いてきました」
2009年5月のゴールデンウイーク明け。立教大学が行ったインターンシップ・ガイダンスに、約800人の学生が詰めかけた。秋の就活本番を前にした3年生はもちろん、なかには2年生の姿も散見された。「先輩からの話を聞いて興味を持ち、就活前にインターンシップを経験しておこうという学生は少なくありませんが、やはり景気悪化の影響は否めません」(同大学コオプ教育・インターンシップオフィス)からで、参加者はここ数年増えている。
就活が早まることに、「学業に専念できる時間がない」との批判がないわけではないが、立教大学は「インターンシップでの経験を、その後の大学での学習意欲の向上や自分の資質を見極めるのに役立て、生き方や働き方を模索してもらうことを狙っており、就活ではない」と説明する。
単位化していないが、インターシップを「就業体験」と位置付けて、興味があれば学部も関係なく、また1年生でも参加できるようにした。
「この夏は工場で働いてきました」――。玉川大学の学生はそう話す。ここではインターシップを単位認定している。また、跡見女子学園大学は1、2年生を対象にしたキャリア・デザイン・ガイダンスを開催。就活への心得や、「働く」ことや将来設計について考える機会を設けている。
ある工学系の大学に通う女子学生は「キャリアセンターでは就活前からOG訪問へのアドバイスや女性の働き方、会社四季報や日経新聞の読み方といろいろ教えてくれ、それを活用している」と話す。
大学の就活サポートも年々手厚く、かつ前倒しで進めているようだ。
「就活で人間力を養う」という考え方
一方、「就活で人間力を養う」という考えが、企業側にも芽ばえつつある。日本ヒューレット・パッカードをプロジェクトの推進役に、就活を応援している「SHUKATSU It's ME応援委員会」が10月8日に開催した「SHUKATSU It's ME SCHOOL ~内定力養成講座~」には約70人の学生が集まった。
このイベントは、就活学生に自分自身を見つめてもらい、「個性」と若々しい「創造力」を再発見してもらうことが目的。講座では、相手の心を揺り動かすことのできる力、「信用」を得る力を養おうとアドバイスした。講座終了後には、学生と社会人との意見交換も行われた。こうした活動に、学生も「自分磨きのセミナーであれば、早いうちからやっておいても損はない」(3年生男子)と、歓迎のようだ。
参加した学生に就活について聞くと、「周囲をみても早くから動いていて、正直ちょっとあせっています」(私大3年生)と、不安げな声が漏れる。大学からも「今年は早いから」と言われ、尻をたたかれたという。
解禁初日に、25社にエントリーしたという男子学生は「もう、めちゃくちゃ不安」と訴える。「就活を意識しはじめたのは1年前くらいから。SPI模擬試験も受けましたし、自己分析などはネットで簡単に、客観的に判断してくれるサイトがあって、悪いところを指摘してくれる。企業研究もネットで情報収集。ふだんはそんな感じです」と話し、就活で頭がいっぱいの様子。
不安をかき消すために、企業や大学が開くセミナーに積極的に参加していることもあるようだ。