タスポ特需で売り上げを伸ばしていたコンビニも、節約志向の高まりでここ3カ月は連続して売上高が前年を下回っている。このため、低価格の惣菜や弁当を販売する動きが広がり、「ミニストップ」はイオンのスーパーで売っている、安いプライベート・ブランド(PB)の惣菜を売り出したほか、「デイリーヤマザキ」はコンビニとしては珍しく200円台の弁当を販売している。
ミニストップ、スーパーの低価格PBを投入
「デイリーヤマザキ」で売っている298円のソースチキンカツ弁当
イオン系列のコンビニエンスストア「ミニストップ」は、イオンが取り扱う低価格PB「ベストプライスbyトップバリュ」の惣菜の販売を2009年9月下旬から始め、全国に順次広げていく。
系列スーパーのジャスコ、サティ、マックスバリュなどで売っているPBで、主力PBの「トップバリュ」より1、2割安い。ミニストップでの導入はこれが初めてだ。
9月下旬に78円の茶わん蒸しを発売し、10月6日からキムチ(300グラム、198円)をラインアップに加えた。広報担当者は、
「コンビニはフランチャイズ経営なので、オーナー様に利益が出なければなりません。そのようなわけでPBの導入にはあまり積極的ではなかったのですが、消費者の節約志向を受けて、デイリー商品を強化し、差別化を図ろうと導入を決めました。売れ行き具合をみて、他の惣菜についても検討していきます」
と話している。
ミニストップでは「トップバリュ」のハム、レトルトカレー、ごはん、カップ麺などの食品や日用雑貨を300アイテム扱っているが、ナショナルブランドの価格に合わせた設定にしているので、同じトップバリュでもスーパーに比べるとお得感は少なかった。低価格路線を強化する一環で、これらについても09年春に一部値下げしている。
ごはん200グラムとチキンカツ4切れ入って298円
不景気で客足が伸び悩んだ百貨店を尻目に、コンビニは08年の売上高が絶好調だった。日本フランチャイズチェーンによると08年の全国コンビニエンスストア売上高は、新規店を含めた全店規模で前年比6.7%増の7兆8566億円で、同年の全国百貨店売上高の7兆3813億円(同比4.3%減)を上回った。タバコ自動販売機の成人識別ICカード「taspo(タスポ)」導入の影響で、店内でのタバコ販売が好調だった。
しかしタスポ特需はそう長くは続かず、09年6月に既存店ベースの売上高が前年同月比2.3%減の6059億円と14カ月ぶりのマイナスを記録。7月は7.5%減、8月は5.5%減と3カ月連続で前年同月を下回っている。タスポ効果が一巡したこともあるが、長引く不景気で消費者の生活防衛意識が高まり、割引販売や低価格商品が少ないコンビニから客足が遠のいたことが一番の原因だ。
各社とも低価格路線を強化することで、巻き返しを図っている。
コンビニ弁当では珍しく200円台も登場した。山崎製パンが展開するコンビニ「デイリーヤマザキ」で09年8月から298円の弁当を一部地域で販売している。10月に販売しているソースチキンカツ弁当は、ごはんが200グラムとチキンカツが4切れ入って、ボリュームがある。系列の「ヤマザキショップ」と共通の容器、食材を使うことでコストを下げた。
ローソンは105円均一店「ローソンストア100」で販売している惣菜シリーズ「バリューライン惣菜」を、関東地区のコンビニ「ローソン」でも09年4月から売り始めた。コロッケ(3個入り)、メンチカツ(2個入り)など全8品で、価格はすべて105円だ。同社によると、都内約40店舗で実験販売を行ったところ惣菜全体の販売数が約2倍に伸びた。
広報担当者は、
「実売のほうも好調です。ただ、安い商品だけが売れるというのではなく、お客様の志向が両極端になってきていると思います」
といっている。
同社が7月から販売している450円のスタミナ牛焼肉弁当や、1個150円のプレミアムロールケーキといった高価格商品も売れているそうだ。そうしたこともあり、
「すべて低価格路線にするのではなく、それぞれのニーズに合うように商品をそろえていく必要がある」
としている。