ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金価格が過去最高を記録、これを受けたロンドン市場でも最高値を更新するなど、金相場が世界的に上昇している。日本でもリーマン・ショック後の2008年12月に、1グラム2313円に落ち込んだ小売価格が3000円前後にまで回復、さらに上昇しそうな気配にある。そうした中で、田中貴金属グループの直営店「GINZA TANAKA」には、金を売って儲けを確定しようという、「売り」のお客が増えている。
世界的な上昇「変動の大きい為替よりもいい」
米ドルの下落を受けて、金への資金流入が続いている。金の国際価格の指標になっているニューヨーク金先物相場は、2009年10月7日のCOMEXで前日比4.70ドル高の1オンス(31.1グラム)1044.40ドルで取引を終えた。この日は一時1049.70ドルまで上昇し、前日に更新した最高値をあっさり塗り替えた。
ニューヨーク市場を受けたロンドン市場は6日、1年6か月ぶりの高値になる1オンス1029.00ドルを記録。1100ドルをうかがう勢いにある。
金への投資が増えている背景には、中国やインドなどの投資マネーの流入や宝飾品の需要の強まりがあるとされる。また、米ドルがユーロや円などに対して下落が著しいため、「緊急避難先として金に投資するケースは増えています。金は現物資産でありながら通貨の代替として、どの通貨にも交換できるという性格がありますから、変動が大きい為替相場に投資するよりもいいという判断もあるようです」(商品先物アナリスト)という。
日米欧の景気の先行きが不透明なことも手伝って、資金運用の安定志向が強まっていることもある。
円高で国内価格はじんわり上昇
一方、国内の小売価格は10月8日現在で、前日比5円高のグラム3148円。海外の流れを受けて、上昇傾向にある。
こうした中で、「いまが売るチャンス」と考える人は少なくない。なにしろ、たとえば08年12月に購入した人でも、現在の価格は800円程度上昇している。一たん売って、利益を確保してから再度投資のタイミングをうかがう、といった考えもうなずける。
田中貴金属工業が展開する「GINZA TANAKA」には、ニューヨークで最高値を更新したという情報を聞きつけたお客が、金を売りに訪れた。同社によると、「小売価格が3000円弱くらいだと、売り買いがほぼ拮抗するんですが、3000円を超してくるとやや売りが優勢になってきます」と話す。
ただ、国内の金価格が海外市場のような右肩上がりを続けていくとは限らない。最近1か月の小売価格の推移をみると、最高値は9月8日の3159円だった。高値水準ではあるが、急上昇というほどではない。
その原因は「円高」にある。金の価格はドル建てで換算される。そのため国内価格で円換算すると、海外で上昇した価格の分が円高によって相殺される格好になってしまうわけだ。
鳩山政権の発足以降、「円高ドル安」傾向が続いているだけに、国内の金価格がニューヨークのような勢いにはない。じんわり上昇するなかで、売るタイミングを計ることになりそうだ。