置き引きで起訴猶予処分を受けた経済学者の髙橋洋一氏が、処分後初の著書を出し、初めて事件のことに触れた。高橋氏は出身である財務省のタブーに触れたと騒がれていた。そのせいもあって、事件について様々な憶測も流れているが、真相はやぶの中だ。
「外には漏らさない」と言ったため了解した
「霞が関に刃向かった者の末路」。髙橋氏が新しく出した著書の序章のタイトルだ。本の帯にも、「緊急出版!狙われたエコノミストの反撃!!」とある。
もちろん、置き引き発覚で髙橋氏がたどった道を示唆しているとみられる。事件について、髙橋氏は、2009年9月30日に出版されたこの著書「恐慌は日本の大チャンス」で初めて口を開いた。
それによると、髙橋氏は3月24日夜、自宅近くの日帰り温泉施設でロッカーを使おうとして、忘れ物らしきものを見つけた。しかし、この忘れ物については、後で届けようと思っていたというのだ。その理由として、2晩の徹夜明けでもうろうとし、マッサージの時間に遅れたくない気持ちもあったことを挙げる。
その後、気持ちよくなって2時間近くも寝込み、届けることを忘れて外に出ると、警察が待ち受けていたと明かす。警察は、否認すると面倒になるといい、「外には漏らさない」と言ったため了解した。
ところが、書類送検された3月30日になって、マスコミが一斉にこの事件を報じた。報道では、髙橋氏は、カギのかかっていないロッカーから、現金5万円入りの財布やブルガリ製高級腕時計など計30万円相当を盗んだ疑いだった。結果として、東洋大教授を懲戒免職となり、4月27日には、免職の社会的制裁と被害品の返却が酌量されて起訴猶予になったと発表された。
髙橋氏は、官僚時代に小泉ブレーンとして当時の竹中平蔵総務相の下で郵政民営化を推し進め、在職中の07年には「霞が関埋蔵金」を明らかにして波紋を呼んだ。また、退官した08年3月に、9万部のベストセラーになった「さらば財務省!」を出版するなど異色の経歴を持つ。それだけに、置き引きが発覚したときには、「霞が関の陰謀、国策捜査だ」との憶測さえも飛び交っている。