焼酎の売上げが好調で、メーカー上位50社の2008年の売上高合計が過去最高を記録した。なかでも、芋焼酎「黒霧島」をつくる霧島酒造は前年比2ケタ増と大幅に伸びた。芋焼酎の人気が上がっていることと、値頃感のある価格も不況下で好調だった理由だ。一方、大型専門店では、安い大手酒造メーカーの焼酎も目立って売れている。
「芋特有の味が評価されるようになった」
帝国データバンク福岡支店によると、焼酎メーカー上位50社の2008年1~12月の売上高合計は前年比3.8%増の3471億9500万円で、ピークの04年を上回り、「過去最高」を記録した。09年9月29日に発表した。帝国データバンクの企業情報データベースに収録されている企業のうち、売上高に占める焼酎比率が50%以上の企業が対象。
50社のうち半数が売上高で前年を上回り、5社については前年比2ケタ増だった。
伸び率がもっとも大きかったのは、霧島酒造(宮崎県都城市)。芋焼酎が主力で、「黒霧島」や「霧島」が有名だ。08年の売上高は前年比23.2%増の368億7200万円。03年から連続2ケタ増を続け、08年売上高ランキングでは2位を獲得した。
霧島酒造の広報担当者は、好調の理由について、
「芋焼酎は『くさい』という人が以前は結構いましたが、近年の焼酎ブームで全国に認知され、芋特有の味が評価されるようになったんだと思います。アルコール度数が20度で1.8リットルあたり1600~1700円、25度でも1800円台後半と値頃感のある価格設定ですので、景気悪化の影響を受けにくいという理由もあるでしょう。09年1月以降の出荷状況も順調です」
といっている。
続いて、伸び率が大きかったのは、芋焼酎「魔界への誘い」、麦焼酎「舞ここち」の光武酒造場(佐賀県鹿島市)が前年比21.8%増の14億400万円、芋焼酎「薩摩一」「わか松」の若松酒造(鹿児島県日置郡市)が同21.5%増の58億3700万円、芋焼酎「ハイカラさん」「おやっとさあ」の岩川醸造(鹿児島県曽於市)が同20.7%増の35億円だった。これを見ても「芋」が伸びているのがわかる。
甲類と乙類をブレンドさせた焼酎も売れてる
焼酎には酎ハイやサワーに用いられる甲類(連続式蒸留)と、麦、芋、米を原料としロックやお湯割りで飲む乙類(単式蒸留、本格焼酎)がある。
国税庁のアルコール消費量調査によると、焼酎はビール(ビール類含む)に次いで多く、甲類、乙類を合わせた消費量は04年が9億8307万リットル、05年9億8854万リットル、06年10億22万リットル、07年10億478万リットルと年々、伸びている。
「本格焼酎では芋焼酎『黒霧島』に勢いがありますね。あとは、アルコール度数が25度、1.8リットルで1500円前後のものが売れています。一方、同価格の日本酒の場合、アルコール度数は15度です。焼酎のほうがお得感があるというのも、不景気でウケがいい理由だと思います」
関東で酒類の大型店を展開する河内屋酒販(東京都江戸川区)の商品部酒類部長は、こうみている。
「最近、目だって売れている」というのは、甲類と乙類をブレンドさせた甲乙混和焼酎だ。大手酒造メーカーが作っていることが多く、アサヒビールの「かのか」やオエノングループの合同酒精「麦盛り」などがある。
河内屋酒販の酒類部長は、
「アルコール度数25度、1.8リットルで1000円前後と、本格焼酎に比べて3割ほど安く、さらにお得感があります。クセがなく切れ味のある味で、冷やして飲むのに向いていて、都市部を中心に売れています」
といっている。
ただ、焼酎なら何でもかんでも売れているというわけではなさそうだ。
「売れているのは、値頃価格、ブランドイメージ、健康志向の3点とも当てはまる商品で、明暗がはっきり分かれています」(河内屋酒販)
帝国データバンクの焼酎メーカー売上高ランキングで売上高1位だったのは、麦焼酎「いいちこ」の三和酒類(大分県宇佐市)。ところが前年比0.1%減と、4年連続でマイナスだった。帝国データバンクは、「芋焼酎の市場拡大や大手酒類メーカーの参入などの影響を受けた」と分析する。3位の芋焼酎「さつま白波」など展開する薩摩酒造(鹿児島県枕崎市)も同2.5%減で、「関東、関西方面への出荷が伸び悩んだ」としている。