NTTグループの支給額減額の申請は却下
企業年金をめぐっては、02年に松下電器産業(現・パナソニック)が、業績不振を理由に年金の給付額を引き下げ、退職者の一部が減額分の支払いを求めて相次いで裁判を起こしたことは広く知られているが、退職者が減額に同意したとしても、実際の減額に踏み切ることができないケースもある。
NTTグループでは04年、現役世代の企業年金について実質的な減額に踏み切ったものの、05年に約14万人の退職者を対象とした支給額減額のための規約変更を厚生労働省に申請したところ、同省は06年2月になって「NTT東西では黒字決算が出ている」などとして、申請を却下した。確定給付企業年金法の施行規則では、(1)経営環境が悪化したとき(2)受給額を減額しないと掛け金が大幅に上昇し、会社側が掛け金を払うのが難しくなるとき、のみ受給額が減額できると定められているからだ。
これに対してNTT側は、(1)減額対象者の9割から同意を取り付けている(2)黒字はリストラの成果で、経営環境は厳しい、などとして反発。NTT側は06年5月になって、国を相手取って処分取り消しを求めて行政訴訟を東京地裁に起こしたが、「減額がやむを得ないほどの経営悪化とは認められない」などとして1、2審ともにNTTが敗訴。NTT側はこれを不服として、08年7月に最高裁に上告し、現在でも係争中だ。
最近の例では、経営再建中の近畿日本ツーリストが、09年8月11日、中期経営計画の一環として年金の給付利率の引き下げを打ち出したばかりだ。今後、同様の方針を打ち出す企業が増えるのは確実だが、実際の給付金削減に踏み切るまでに乗り越えるべきハードルは高そうだ。