いわゆる「1000円高速」の影響で、フェリーや鉄道の業績が低迷している。中でも、山岳地帯が多い四国をカバーする四国旅客鉄道(JR四国)の業績の落ち込みが著しい。2009年8月の運賃収入は前年同月比で11.5%減少し、「2ケタ減」は4か月連続。このため、乗務員の数や、1編成に連結する車両数が減らされるなど、利用者への影響も出始めており、周辺自治体も、高速道路の無料化が現実味を帯びる中、「JR四国が経営危機に陥れば、市民の足がなくなる」と、気をもんでいる。
価格では高速に太刀打ちできない
JR四国は2009年9月28日、09年8月の鉄道営業概況を発表した。鉄道収入は前年同期比11.5%減の33億1500万円で、「2ケタ減」は4か月連続だ。09年度の累計(09年4月~8月)では、152億700万円で、前年同期比で12.6%も減少している。
同社では、景気後退に加えて、「1000円高速」で利用者が高速道路に流れ、さらに新型インフルエンザが追い打ちをかけたことが業績悪化の要因とみており、松田清宏社長は同日の定例会見で、
「ある程度の減収は想像していたが、(高速道路)1000円だと、4人家族なら1人当たり250円。価格では太刀打ちできない。環境面での鉄道の良さなど、別の魅力を訴えるしかない」
と、苦しい状況について語った。
特に収入の落ち込みが深刻なのが、本州から一番離れている高知県だ。09年8月の旅客収入を県別に見ていくと、香川県が前年同期比9.5%、愛媛県が11.9%、徳島県が11.5%の落ち込み幅なのに対し、高知県は、実に16.4%も減っている。
高知市の岡崎誠也市長は、9月3日の会見で、高速道路の無料化と関連して「JR四国の経営が苦しくなり、経営危機に陥るようならば大変。地域住民の足が確保出来なくなるのではないか」と、不安をにじませた。
1編成あたりの車両数を1~2両減らす
業績悪化の影響は、すでに利用者にも及んでいる。JR四国では9月1日から、普通列車の車掌を運転士が兼ねる「ワンマン運転」の割合を35.8%から38.2%に引き上げたほか、一部の列車については、1編成あたりの車両数を1~2両減らしている。列車の運行本数を減らさずにコストカットを図る苦肉の策だが、春のダイヤ改定を待たずに運行計画を変更するのは異例で、同社のせっぱ詰まった様子がうかがえる。
そのような状況を受けて、JR四国では9月28日、役員報酬と管理職給与の一部をカットすることを発表した。カット幅は松田社長を初めとする取締役が5~10%で、課長級以上の管理職員約100人が、管理職手当のうち10%。期間は、いずれも09年10月~12月の3か月。ただし、今回の措置で削減が見込める額は900万円程度。収入の落ち込みに比べれば「焼け石に水」だ。地方の道路の無料化が現実味を帯びる中、四国に限らず、JR各社は、当分は苦しい経営を迫られそうだ。