「安心、安全」が一番の目的 民営化4年それが浸透してきた
NEXCO西日本・石田会長に聞く

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日本を世界から信頼される国にしたい

――NEXCO西日本は、社会貢献活動にも熱心ですね。

石田 西日本を元気にしたい。また、恵まれない国をサポートしていきたいと考えています。「必要以上の利益は取らない。損はダメだけど、ある程度利益が出たら、残りは社会に還元する」。昔の経営者は、こうしたマインドを持っていたはずですが、今は少なくなっているように思います。社会に対する奉仕です。日本を世界から信頼される国にしたいですね。日本が尊敬されなくなったら、「国籍無き世界の『根無し草』企業」になってしまう。そうなると、会社に対する信頼感もなくなってしまうでしょう。

――国境を越えた、スケールが大きい話になりますね。

石田 07年からアフリカのスーダンでマラリアの治療に奔走する日本人医師のNPO法人に1000万円の寄付を始めました。リーマンショック以後、経済環境が急に厳しくなって、NPO法人から「NEXCO西日本さん、(支援の継続は)大丈夫でしょうか」という問い合わせがあったのですが、「大丈夫。安心してください」と答えました。「会社の経営が不調になったらやめる」というぐらいなら、最初からやらない方がいい。相手に迷惑がかかります。絶対に継続しないといけません。もっとも、社会貢献は海外中心というわけではありません。国内でも「産科医学生奨学基金」や福祉車両、車椅子の寄贈などSA・PAのテナントさんと協働していろいろやっています。

――SAの店舗にも、社会貢献のマインドが出てきた、と聞きます。

石田 不景気で一般の小売店の売り上げが落ちる中、サービスエリアは4~7月で16%売り上げが伸びています。これは、いわゆる「1000円高速」のおかげなのですが、もとはといえば税金です。その分、社会に還元しないといけない。毎月第一日曜日にSA・PAのほぼ全商品が2割引になる「お客様感謝DAY」を行ったり、トイレを改善したり、バリアフリー化を進めたりしているのも、その延長です。このように、弊社の負担で取り組む社会還元とは別に、四国などの店舗では、第3日曜日に多くの商品が2割引になっています。西日本高速道路のSA・PAでは、多くの店舗(テナント)さんに、「社会に尽くす」という理念に共感していただいていて、テナントさんが独自に実施する還元策が広がっています。嬉しいことです。

――「公的な企業」という意識を強くお持ちのようですね。

石田 私はそう思っています。「利益が出たから、みんなで山分けしよう」というのは違う。「皆さんに使っていただいて、我々の生業は成り立っている。社会と違う行き方をするのはやめよう」ということです。儲かったからといって、それを使って急に賃上げをするようなこともありません。この方針には社員も納得してくれています。

――ところで、新政権が打ち出している「無料化案」についてはさまざまな意見、見方が出ています。どのような問題点がありますか?

石田 「救急輸送に役立つ」というのは高速道路の大きな利点です。例えば大分県のある街では、国道を使うと1時間半かかっていたものが、1時間で搬送できるようになりました。料金が下がって渋滞が起きると、この利点がなくなってしまいます。助かる命が助からなくなるのではと危惧しています。今後、政策を具体化するのであれば、その影響を十分考慮し、補完策も合わせて実施していかれることを期待しています。少なくとも、「渋滞が起こらない程度の値下げ幅にする」「ドクターヘリを置く」といった政策を同時に行う必要があるのではないでしょうか。
   また、メンテナンスもお金がかかります。その財源をどうするのかということも考え合わせて、十分な議論が必要だと思いますね。

――民主党は「高速道路の建設は、現状で計画されているほどには必要ないのではないか」「建設する分は、一般会計から持ち出せば良い」という議論もしていますね。

石田 もう少し、大きな視野で考えて欲しいと思います。東京一極集中の今、疲弊しつつある地方を豊かにしようと思えば、利便性は保たないといけません。大都市と地方とでは、税のあり方は違ってくるはずです。地方がひとつひとつ、共同体を形成できるようにしないといけない。そのためのインフラが高速道路です。「地方の豊かさを向上させよう。その結果、精神的に豊かな社会を作ろう」という考え方が議論の根底になければならないと思います。

――知事の側は、そのような立場の人が多いようですね。

石田 大阪の橋下知事は、激烈な言葉で地方の重要性や活性化を訴えていますし、宮崎の東国原知事も、高速道路の重要性を力説しています。毎年の恒例行事なんですが、1月5日朝に大分県の広瀬知事と会って、その足で電車に乗って宮崎県に向かうんです。会談では「我々はこれをやりますから、県はこれをしてください」という話をするのですが、このお二人の知事は、約束したことを確実に履行しようと最大限の努力をしてくれます。
   一番大きな問題は土地の取得なのです。土地を収用する権限は知事が持っています。道路建設計画が明らかになった後で、補償金を目当てに土地を買って木を植える「過密植栽(密植)」が相次いでいるのですが、東国原知事は現場視察をして「ここが原因で用地買収が進まないのか。けしからん」と、理解を示して下さっています。こうした障害は1年で半分ぐらいになりました。

――今後、民主党政権に、どのようなことを期待しますか?

石田 「民」が「主」ですから、その名のとおりの政策を展開して欲しいです。「政治屋」ではなく「政治家」として、「政(まつりごと)」をやって欲しいと思っています。

石田孝さん プロフィール

いしだ・たかし
1943年福岡県北九州市生まれ。66年神戸製鋼所入社。取締役、専務執行役員、都市環境カンパニー執行副社長を経て2002年コベルコ建機社長。04年会長兼コベルコクレーン社長、05年西日本高速道路会長CEO、05年西日本高速道路サービス・ホールディングス会長CEO兼務。座右の銘は「あるがままに」。

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