鳩山由紀夫首相の「公約」に反して、ネットメディアやフリージャーナリストは首相記者会見への参加を認められていない。この問題をテレビや新聞はほとんど報じていないが、2009年9月26日未明に放送されたテレビ朝日の討論番組「朝まで生テレビ!」は冒頭で取り上げた。司会の田原総一朗さんが「官邸会見も開いていくのか」と問いただすと、出演していた民主議員は「開いていく方向だと思う」と渋々、答えた。
「テレビや新聞で記者クラブ問題が報じられないのは、国民として驚き」
「鳩山新政権の理想と現実」というテーマで討論が行われた9月26日の「朝まで生テレビ!」には、民主党や自民党の国会議員のほか、フリージャーナリストの上杉隆さんなどがパネリストとして参加した。番組の冒頭、司会の田原さんは、ネットなどで「鳩山政権の最初の公約違反」と批判されている「首相会見問題」に矛先を向け、上杉さんに説明を求めた。
民主党は野党時代から代表の記者会見をオープンにしており、記者クラブに所属していないフリー記者も入ることができた。5月16日の鳩山代表の就任会見でも、「民主党が政権を取ったら、官邸での会見もオープンになるのか」と上杉さんが質問したところ、鳩山代表は「上杉さんにもオープンでございますので、どうぞお入りをいただきたい」と明言した。
ところが、9月16日の鳩山首相就任会見に上杉さんが赴くと、会場に入るどころか官邸の門で門前払いを受けてしまった。就任会見がオープンにされなかったことについて、雑誌やネットメディアは「公約違反だ」と報じた。しかし上杉さんは、
「新聞・テレビは、今日初めて東京新聞が報じた以外は、一文字も報じていない」
という。それに対して、田原さんは
「なんで新聞は報じないの?」
と聞きかけたが、
「あ、自分たちは行けているからだ!」
とすぐに納得した様子をみせた。一方、主にテレビや新聞で情報を得ているというパネリストの精神科医・香山リカさんは、
「アメリカで鳩山さんがかっこよく演説している姿しか知らない。テレビとか新聞では(記者クラブ問題が)報じられていないというのは国民として驚きですね」
とコメントした。
「記者会見のオープン化ができなければ、霞が関改革はできない」
鳩山首相が選挙前に公言していた首相会見のオープン化がなぜ実現しないのか。田原さんが
「(記者クラブに所属する)新聞やテレビの既得権益を持った連中が反対しているわけ?」
とたずねると、上杉さんは、
「何十年も、官邸会見はノーチェックで記者クラブが報じてきた。記者クラブの既得権益の問題ではなく、むしろ霞が関の問題」
と、報道をコントロールしたい官僚組織の意向が働いているという見解を示し、
「記者会見オープンという一歩の改革さえもできないなら、霞が関改革はできない」
と訴えた。
このようなやり取りに対して、出演していた民主党議員たちの発言は歯切れが悪い。大塚耕平・参院議員(内閣府副大臣)は、会見オープン化が実現しなかった理由について、
「記者クラブと官邸との申し合わせを変えるに至ってない。本当に変えることができるか、鳩山さんが帰ったら検討することになるが、簡単ではないと思います」
と答えた。
一方、元民主党代表の岡田克也外相はひとあし先に会見のオープン化を決めた。その外務省で副大臣を務める福山哲郎・参院議員に対して、田原さんが
「官邸会見も開いていくのか?」
とずばり聞くと、福山議員は
「官邸は、これから官房が記者クラブと何度かやり取りしながら対応していくと思います」
とかわそうとした。しかし、さらに田原さんが
「やっぱり開いていくのかね?」
とたたみかけると、
「そりゃ、開いていく方向だと思います」
と回答した。