NTTドコモが、携帯電話の素材に「木(ヒノキ)」を使った試作機「TOUCH WOOD」を発表した。間伐材を活用し、「環境にもやさしい」のが特長で、「木」のケータイは世界でも例をみない。じつは日本の森林の現状は過密状態で、間伐を積極的に行っていく必要がある。NTTドコモはそこに着目した。「木」のケータイは、2009年10月6日から開催される最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2009」に出品され、参加者の注目を集めそうだ。
手にしたときにしっくり感ある「豆形」フォルム
間伐材から生まれた「木」のケータイ
「木」の携帯電話「TOUCH WOOD」は、「毎日長時間手にするケータイだからこそ、手になじみのよいリアルな素材を使いたい」(NTTドコモのデザインマネジメント担当・岡野令氏)との発想から生まれた。
これまでのケータイに使われていた「木」は模造品。虫食いやカビ、防腐対策が必要になるのでホンモノの木は使えなかった。
製品化を可能にしたのは、オリンパス社が開発した木材の三次元圧縮成形加工技術だ。木の年輪や木目を生かしながら、耐久性や耐水性、防虫性に防カビ性を高めることに成功。強度も、ふだんのケータイに使われているプラスチックとそん色ない堅さになった。
NTTドコモの岡野氏は「木という伝統的な素材とタッチパネルという最先端の技術の組み合わせ(融合)によるおもしろさを表現したかった」と語る。四角くメタリックで、無機質なデザインが多いケータイの中にあって、でき上がったデザインは、手にとったときのしっくり感を重視した「豆形」フォルムだ。
メニュー画面はシンプルで、ストレスのない操作性を実現。さらに着信音には鳥や風の音などを音源にして制作するなどの徹底したエコ志向だ。
間伐材の積極活用にひと役
「木」のケータイは、木目や光沢のどれをとっても同じモノがない「一品モノ」が売り。今回の試作機における木材の調達にあたっては、音楽家の坂本龍一氏らの呼びかけで、国内人工林の間伐の促進をはじめ、森林保護活動を続けているモア・トゥリーズ(more trees)の協力を得て、四万十原産のヒノキの間伐材を使用した。
間伐材の利用を促進し、陽の光が差し込む「健康」な森林の育成と林業の再生を支援するのがモア・トゥリーズの目的で、NTTドコモもこの活動に賛同している。
日本の森林は過密状態で、25ミリ角のサイコロに換算して1兆2420億個分もの間伐材を使っていかないと森全体がダメになってしまう恐れがある。NTTドコモはケータイを通じて、使い道に困っていた間伐材の積極活用にひと役買ったというわけだ。
ちなみに、モア・トゥリーズが手がけた「間伐材グッズ」にはペンケース、携帯電話スタンドなどがあり、木製USBフラッシュメモリーは四万十川のスギの間伐材を使った。
「ガマンしたり耐えたりするエコよりも、無理しない、使いながら取り組むエコのほうが長続きする」と、NTTドコモの岡野氏は話す。
一品モノの個性豊かなケータイは、使うほどに「木」の味わいが増す魅力もある。自然保護などの環境意識の高いユーザーはもちろん、本物志向の強い大人のユーザーにもマッチしそうだ。