「若々しくきれいでいたい」と「美容整形」の門を叩く50、60歳代の女性が増えている。都内のクリニックでは患者の半数以上が中高年女性だ。「老け顔」の犯人、「シミ」「シワ」「たるみ」をなくし、見た目が10~15歳も若返る人もいる。また、最近は大学病院でも最先端の美容医療を受けることができ、注目を集めている。
患者の半数以上が中高年女性
「ここ数年で中高年女性の患者さんは増加しています。東京でも月に平均1000人以上の患者さんが来院しますが、そのうち半数以上が中高年です」
というのは、聖心美容外科の鎌倉達郎統括院長だ。
目や口の周りのシワ、たるみを気にする中高年女性が多く、ほとんどが「若返り」を希望する。高い効果と持続性が得られると人気の治療法は、自身の血液から採取した血小板などの成分を利用する「プレミアムPRP皮膚再生療法」といい、最先端の再生医療だ。「溶ける糸」を使って額のシワ、目尻、口角のたるみなどをリフトアップする「シルエットリフト」という方法もある。
鎌倉統括院長は若返りの効果について、
「人によりますが、5歳程度の自然な若返りもあれば、10~15歳程度の劇的な『若返り』を得られる方もいらっしゃいます」
と明かす。
最近は、大学病院でも美容医療を受けることが可能だ。
東京大学医学部附属病院 形成外科・美容外科は、美容外科と美容皮膚治療を行っている。おでこ、目もと、口の周り、あごなどにできた皮膚のたるみには、皮膚の一部を切開してリフトアップする「フェイスリフト」が効果的だ。浅いシワにはコラーゲンを注入し、深いシワにはボツリヌス菌毒素(ボトックス)注射といったメスを使わない治療もある。シミの場合は症状によって治療法が異なり、レーザー照射や、ビタミンA誘導体のトレチノイン、漂白作用のあるハイドロキノンといった薬剤を組み合わせて使用する。
90歳の女性もボトックス注射受けている
「患者さんは少しずつ増えています。若返りの場合、50、60歳代の患者さんがメインですが、なかには79歳の女性でフェイスリフトの施術を受けた例もあり、レーザーやヒアルロン酸、ボトックスの注射を受けられた90歳の女性もいます。外科手術も局所麻酔で短い時間で済むものであれば高齢でも問題はありません」
といっている。
大学病院とクリニックの美容医療にはどのような違いがあるのか。
「クリニックはメニューが豊富で、サービス医療を提供することに特化されていますが、大学病院の使命は最先端の医療を研究し、専門家を養成し美容医療全体の質と信頼を上げていくことにあると考えています」
1990年代後半からレーザーや光治療といったメスを使わない美容医療が発達し、エステの延長上で施術を受ける人が増えている。今後もますます需要が増えるとみられているが、自分が何をしたいのか、どうなりたいのか、という考えがまとまっていない状態でクリニックに行く人も多く、トラブルの原因になっている。
吉村先生は「美容医療ハンドブック」(角川SSコミュニケーションズ、09年8月31日発行)を監修した。治療法やトラブルの事例がくわしく書かれている。
「美容治療は医師が勧めるものではなく、患者さん自身が目的を明確にしてから受診する必要があります。治療法についてもセカンドオピニオンも取り入れる方がいいと思います。その1つとして、大学病院という選択肢があってもいいかもしれません」
東京女子医科大学東医療センター日暮里クリニック美容医療部でも美容医療を行っている。顔面に光を照射するIPLやレーザーなど最新機器を使った「切らない治療」や、ヒアルロン酸、ボトックス注射もある。患者の要望に応じて美容手術も行い多角的な治療をしていく。1日の患者数は10人程度で、ここでも中高年の女性が多い。
また、「サプリメント外来」を08年4月から設け、内側から「若返って美しくなりたい」「老化を防ぎたい」というニーズに応えている。治療とサプリメントを併用している積極的な患者もいるそうだ。