酒井法子被告(38)ら薬物汚染が広がる中、芸能界でも、その対策に乗り出す動きが出てきた。ところが、抜き打ち検査などには尻込みする事務所が多いようなのだ。「薬物に手を出した芸能人の永久追放を」との声もあるのだが…。
薬物検査、まだ検討していないとサンミュージック
「タレントに薬物検査 サンミュージックが検討」
これは読売新聞が2009年9月9日の夕刊社会面に載せた記事の見出しだ。
芸能界はこの日、警視庁と初の意見交換会を開くなど本格的に薬物対策に乗り出した。記事では、そんな動きの中で、酒井法子被告の元所属事務所が、契約タレントに薬物検査を行う検討を始めた、と報じている。
具体的には、健康診断で尿や血液の薬物検査を行うというものだ。実現すれば異例だとして、「今後はしっかり説明すれば理解してくれるのでは」との同社関係者のコメントが紹介されている。
ところが、サンミュージック側が、この報道に困惑していることが分かった。担当者は、「読売には、そんなことは一切言っていません。こういう記事を出されて、とても困っています。これから(対策の)項目を考えていくということです」と言うのだ。
つまり、薬物検査は、項目に入れる可能性がゼロではないが、まだ検討を始めたわけではないということだ。これに対し、読売新聞東京本社の広報部では、取材に対し、FAXで「本紙報道の通りです」とサンミュージック側に反論するコメントをしている。
真相は不明だが、事務所サイドは、薬物対応にピリピリしている様子だ。
サンミュージックは、9日に社内に危機管理委員会を設置し、1か月をめどに何らかの結論を出す見通し。ただ、薬物ばかりでなく、未成年の飲酒・喫煙などへの対策も検討しているとしている。
「タレントとの信頼関係にひびが入る」
薬物汚染の広がりで、芸能関係者からは、抜本的な対策を求める声が相次いでいる。思い切って芸能人への抜き打ち検査をしたり、薬物使用の芸能人を復帰させないようにしたりすべきだ、といったものだ。それは、巨額の資金が動く芸能界はクスリに汚染されやすいことや、芸能人は若者への社会的影響力が大きいことが根拠にある。
角界では、力士の大麻事件が相次いだことを受け、日本相撲協会が抜き打ちの尿検査をしている。もし薬物反応が出て解雇されれば、それは永久追放を意味する。ところが、抜き打ち検査への芸能界の反応は、鈍い。
日本音楽事業者協会(音事協)など主要な芸能団体は、タレント向けマニュアルの作成や広報誌での薬物問題特集などを決めるなど、対策に乗り出した。しかし、新聞各紙によると、抜き打ち検査までは各事務所に求めない方針だという。相撲協会とは違って団体が直接タレントを雇っているわけではなく、芸能人も数万人と多すぎるからというのだ。
抜き打ちを含めて薬物検査を導入する事務所の動きも一部で伝えられているが、大手芸能プロ幹部によると、まだほとんど聞かないという。サンミュージックの関係者も、取材に対し、「何でもない人への抜き打ちは考えていません。タレントとの信頼関係にひびが入って、仕事ができなくなるからですよ」と言う。
また、別の大手芸能プロダクションでも、同様な理由から抜き打ち検査は考えていないとする。「タレントの生活を見ていれば分かりますので、日々厳しく管理していけば防げると思っています」とこの芸能プロの幹部。
もっとも、薬物発覚による損害額が大きいこともあって、対策の必要性は感じているようだ。
「今後は、クライアントから、大きなキャンペーンなどで薬物検査結果を入れた診断書提出が要求される可能性があると思っています。芸能団体は、総会を開いて、薬物に手を出した芸能人は永久追放することに決めるぐらいはやらないとダメでしょうね」