安い振込手数料が評判だったイーバンク銀行が2010年2月1日から、振込(送金)手数料の有料化に踏み切る。イーバンク銀行同士の口座の振り込みであれば手数料は無料だったが、1件あたり50円が必要になる。経営不振で楽天グループに傘下入りした同行だが、楽天主導のテコ入れ策とみられる。
振込手数料、他行よりはまだ低い
イーバンク銀行は、ネットオークションやネットショッピングなどの決済サービスを収益源としてきただけに、振込手数料は「生命線」ともいえる。頻繁に商品を売買するのであれば、イーバンク同士で口座を持つことで決済コストはかからない。このメリットは大きい。
振込手数料の有料化について、イーバンク銀行は「これまで以上に便利に使ってもらい、親密な取引を続けてもらうためにも、安定収益の確保が必要だ」と理解を求める。
同行の振込手数料は現在、イーバンク同士であれば「無料」。これが2010年2月から有料化され、1件あたり一律50円(税込み)を徴収する。また、メールアドレスで送金できる「メルマネ」も無料から有料になる。
ちなみに、イーバンクから他行宛の振り込みは現行どおり、3万円未満が税込みで160円、3万円以上が同250円になる。
他行との比較では、インターネット専業で同一銀行内の振込手数料をとっているのは、ジャパンネット銀行とセブン銀行で、ともに52円(税込み)を徴収。ソニー銀行は無料だ。
他行宛はジャパンネット銀行が、3万円未満168円、3万円以上262円(いずれも税込み)。セブン銀行とソニー銀行は一律210円をとっている。
イーバンクの新料金は、金額によってはまだ、やや割安感がある。もちろん、メガバンクのネット振込手数料よりも安い。
強まる「楽天」色 会員制で顧客囲い込み
とはいえ、これまで安い手数料を「売り」に口座数を伸ばしてきただけに、影響がでる心配もある。ただ実際は、振込手数料の有料化と同時に、サービス提供がはじまる「イーバンク銀行ハッピープログラム」で利用者を「救済」。マイナス・イメージをやわらげる。
このプログラムは、イーバンクに口座を持ち、楽天グループのサービスを簡単に利用できる「楽天会員リンク」の登録がある人が対象。預かり資産の残高やtoto、公営競技の決済サービスの利用などの取引内容のレベルに応じて振込手数料やATM利用手数料を無料にする。
たとえば、「スーパーVIP」の人は振込手数料が月10回まで無料。「エントリー」ランクの人は月1回、「ビギナー」の人は3回まで無料になるといった具合。会員制にすることで、顧客を囲い込む狙いがある。
イーバンク銀行の2009年3月期の最終赤字は348億円に上った。前年同期と比べて、赤字幅は拡大。楽天の傘下で新たなスタートをきり、「楽天」色を強めることで生き残りを図っている。
09年4月からは、楽天クレジットが手がけてきたカードローンの一部を同行に移して、個人向けカードローン「マイワン」の取り扱いを開始。7月からは、クレジットカード機能付きのキャッシュカード「楽天イーバンクカード」の募集を開始した。
その一方で、10万円以上の預金残高がある人はキャッシュカードの発行手数料が無料だったが、それを有料化。10月からは「楽天キャッシュ」の換金手数料を5%から10%に引き上げるなど、矢継ぎ早に手を打っている。
どれも楽天主導のようにみえるが、今回の手数料改定についてイーバンク銀行は、「楽天の傘下になったことの影響はない」と否定している。