「発展途上国の削減目標は少なくあるべき」
ここで問題となるのは、温室効果ガスの排出量が世界で最も多い中国と、2番目に多い米国の動向だ。世界中の温室効果ガスの約4割を排出しているとされている両国は、これまでは、排出量削減の取り組みに消極的だとされてきた。つまり、両国の取り組みがなければ、今回の民主党の政策も「絵に描いた餅」になる可能性が高い。
ところが、米国については、09年に政権交代が起こってから、様子が変わりつつある。例えば、09年2月にオバマ政権が連邦議会に提出した予算教書では、2020年までに05年比約14%、2050年までに同約83%の削減方針を打ち出している。09年6月には、さらに踏み込んだ「ワックスマン・マーキー法案」が、下院で賛成219、反対212の僅差で可決されている。同法案で提案されている削減幅は、2020年までに05年比20%、2030年までに同42%、2050年までに同83%。排出枠をオークションにかけることなどを提案している。
一方の中国は、きわめて冷淡な反応だ。外務省のスポークスマンが9月8日の会見で
「国際社会は、各国の事情や発展段階を十分考慮する原則を堅持すべき」
と、いわば「発展途上国の削減目標は少なくあるべき」との従来の立場を繰り返した。
中国の英字新聞であるチャイナ・デイリーも同日、鳩山氏のスピーチの内容を報じたが、記事中には、気候変動についての専門家でもある中国石炭情報研究院の黄盛初院長が識者として登場。
「目標値はかなり高いが、工業国としての日本が、気候変動問題についてリーダーシップを取ることは重要」
と、「中国には関係ない」と言わんばかりの態度だ。
もっとも、ロイター通信が9月4日に報じたところによると、オバマ大統領が11月に予定している訪中の際は、温室効果ガスをはじめとする気候変動問題が主な議題になる見通し。米中両国の今後の動向が、民主党の今後の環境政策を左右するのは間違いない様子だ。