さらに増刷を検討
漫画版は、出版社のイースト・プレス(東京都千代田区)が展開している「まんがで読破」と呼ばれる古典作品を漫画化するシリーズのひとつとして、2008年11月に発売。同社の担当者は、シリーズについて
「シリーズ自体、太宰治の『人間失格』でスタートしていますし、人間のドロドロしている部分が描かれたものを出版しようと考えていました」
と話しており、その流れのなかでの出版が決まった様子だ。マンガ版では、190ページにわたってヒトラーの半生が綴られているが、どちらかと言えば「伝記調」で、文庫版の「わが闘争」の内容が、そのままマンガになった訳ではない。通常、同シリーズでは3万5000部程度を売り上げるが、「わが闘争」は、すでに5万部が売れ、9月2日には朝日新聞にも掲載されたこともあり、さらに増刷を検討しているという。
同社によると、
「文庫版は長くて読みにくかったので、マンガになってうれしい」
といった声が寄せられているという。アマゾンの読者評価でも「文庫版と内容が大きく違う」といった声が目立つものの、5点満点で平均は3.5と、比較的評価は良好な様子で、出版したこと自体を非難する声はなりを潜めている。
マンガ版の最終ページには、「わが闘争」について
「偏った国家主義、差別的人種観を正当化した内容から、現在でもドイツでは法律により出版が規制されています。本書をきっかけに、読者の皆様が客観的・批判的にこの問題作の原典に触れ、当時の人権問題を考えていただければ幸いです」
との編集部コメントが掲載されている。