出版不況のなか、宝島社の「ブランドムック」は絶好調だ。若い女性に人気のブランド「シェル(Cher)」「キャス・キッドソン」「レスポートサック」などの新製品情報をテーマにしたムックが発売され、次々とヒットしている。女性誌のようなビジュアルに、トートバッグや折りたたみ傘などオリジナルの付録がついて1000円前後から。お得感が人気の理由だ。
オリコンランキングで2週連続1位
2009年8月17日付け、24日付けのオリコン本ランキングで、ファッションブランド「シェル」のムックが書籍総合部門1位、「マークBY マーク ジェイコブス」が同部門2位を2週連続で獲得した。シェルの8月10~23日の累計販売数は36万3223部、マークBY マーク ジェイコブスは8万8974部だった。
これまでに一番売れたのは、バッグを販売する「レスポートサック」のムックで45万部だ。イギリスのインテリア雑貨「キャス・キッドソン」も35万部売れている。若い女性に人気のファッションブランド「レベッカテイラー」や「ジルスチュアート」などからも出ている。
ムックは女性誌のようなビジュアルで、ブランドの新作情報が満載だ。デザイナーのインタビュー記事も載っていて読み応えもある。
ブランドムックを発行する宝島社は「スウィート(sweet)」「スプリング(spring)」「インレッド(InRed)」「キューティ(CUTiE)」といった女性誌を出している。広報担当者は、
「ムックの編集はもちろん、アイテム(付録)の企画から制作まで、全て編集部で行っています。ファッション誌の編集と同じ手法で作っているので、カタログのように商品を並べるだけではなく、デザイナーのインタビュー記事や着こなし紹介など、ブランドの魅力を最大限に引き出せるような誌面を心がけています。また、『スウィート』をはじめファッション誌7誌の売れ行きが伸びていますが、それらのファッション誌と同様にマーケティングを行い、より人気のある商品になるよう、毎号努力しています」
といっている。
トートバッグ、折りたたみ傘、弁当箱など、ムックでしか手に入らないブランドの付録もついていて、価格は1000円前後から3000円台と値頃感もある。付録目当てに買う人もいるようで、「Yahoo!知恵袋」には「ジルスチュアート」のムックについて、「付録に惹かれて買ってみてもいいかな」「買いました! 付録欲しさに」と09年3月に書き込まれている。
「ブランドのショップでも販売されていないオリジナルアイテムが、近所の書店やコンビニエンスストアで1000円前後で購入できるという点が人気のポイントだと思います。また、アイテムのクオリティの高さに信頼をしていただいていることも大きいのではないかと思います。ブランドの既存顧客はもちろんですが、ブランドは知っているけれどそれほど商品は持っていないという方々にも魅力を感じていただけるような商品づくりをしています」(宝島社)
「ユニクロ」ムック、9月15日に発売
ブランドにとって、ムックは新作情報を伝えるのに魅力的な媒体だ。ファッション誌の場合、1ブランドにつき2、3アイテムくらいしか載らないが、専門ムックならたくさん載せられる。
「レスポートサック」のレスポートサックジャパン、マーケティング担当者は、
「日本全国のショップで掲載商品に関するお問い合わせをいただきました。ご予約もたくさんいただき、予約だけで完売した商品もありました」
といい、反響の大きさがうかがえる。
またムックの魅力については、
「多くの商品を紹介でき、お客さまの反響がダイレクトにあるのが魅力です。また、書店やコンビ二に並ぶことで、ブランドを知らなかったお客さまにも知っていただけます」
と語る。
今後も宝島社と組んでムックを出したいと考えているそうだ。
9月15日には、第1弾と第2弾が完売した「キャス・キッドソン」の第3弾を発売する。
同時に、カジュアル衣料品店「ユニクロ」の最新ファッションを紹介するムックが初めて発売になる。蜷川実花さんなど日本を代表するクリエイターが制作を手がけた。オリジナルのトートバッグもついている。また翻訳版を制作し、アメリカ、イギリス、フランス、シンガポール、中国でも出す予定だ。
ユニクロ広報担当者は、
「既存の紙の広告媒体にはないボリュームと、編集のプロが作っているので雑誌のようで、読み物としても楽しめます。テレビCMやウエブといった既存メディアとは異なるアプローチができて、今後、可能性が広がる媒体ではないでしょうか」
と話している。