新型インフルエンザの感染が急速に広がっている中で、流行時における職場の人員確保など、事業継続のための対策(BCP)を講じている東京都内の企業が10%にも満たないことが、東京都や東京商工会議所などの調べでわかった。大流行によって、ヒト、モノ、カネの動きが滞れば、企業活動の低下は免れない。対策の遅れが懸念されるなか、大手損害保険のコンサルティング会社が手がける感染症対策支援サービスへの引き合いが増えている。
人員計画「対応済み」わずか9.5%
厚生労働省は2009年8月21日、新型インフルエンザについて「流行期に入った」と宣言した。同省によると、8月17日~23日に報告があった患者数は全国で1万1636人。入院患者は100人を超えた。9月2日までに10人の死亡が確認されている。
厚労省は「現在は感染者数については把握していない」(健康局)というが、7月以降の広がりは老若男女を問わず加速度的だ。
東京都と東京商工会議所が都内にある中小企業などを対象に実施した「災害・事故・感染症等対策計画(BCP)に関するアンケート調査」(回答数1902社)によると、感性症対策について43.5%の企業がマスクや消毒剤などの「物品の備蓄」を実施。33.8%がマスクの着用指示や検温など「感染予防の実施」の対策を講じている。
ところが、流行時における交代勤務などの「人員体制の整備計画がある」企業は9.5%に過ぎない。「対策を検討中」の企業を含めても、50%にも届かないのが実情だ。
対策の遅れは、「計画策定に必要な情報が不足」(49.2%)していることや「人的な余裕がない」(45.6%)こと、「費用が確保できない」(33.4%)ことが原因。多くの企業が感染症対策の必要性を認識していながらも、情報不足やコスト面を理由に二の足を踏んでいる。