民主党マニフェストの目玉政策「高速道路料金の原則無料化」。首都高速道路と阪神高速道路以外はすべて無料化と思っている人が多いようだが、実は違う。これから渋滞などのシミュレーションを行い、有料となる高速道路名、区間が決まるのだという。
「原則無料化」と書いたのは選挙対策?
高速道路無料化案の担当者である馬淵澄夫議員は2009年9月2日、テレビ朝日系「報道ステーション」に出演し、高速道路料金無料化によってもたらされるメリットについて語った。キャスターの古舘伊知郎さんは高速道路無料化のメリットは確かにあるが、運輸関連の企業だけでなく一般生活者からも無料化に反対する意見が多く出ていると指摘したうえで、「土日祝日1000円」でも大渋滞が起きているため、無料化になれば、高速道路が機能しなくなる心配はないのか、と聞いた。
これに対し馬淵議員は、どの程度料金を取ると通行量がどうなるかをシミュレーションし、渋滞を避ける計画をたてる、と明らかにした。古館さんはそれを聞いて驚いた。
「首都高速と阪神高速以外は無料と思っている人が多いんですけど、それは違うわけですね?有料になる所があるんですね?」
馬淵議員は、
「少なくても全線一斉に無料化ではないです」
とした。
民主党はマニフェストで高速道路は「原則無料化」と記載している。ただ、無料化の対象となる路線や区間を明示していない。投票前の09年8月13日、岡田克也幹事長は「首都高速道路、阪神高速道路は無料化するつもりはない」と明言。この発言からこの2線以外は無料になると思っても不思議ではない。
「まず地方の高速道路を無料化する、と明確に言えば、わかりやすかったのではないか」
という古館さんに対し、馬淵議員は「私はそのように申し上げて来ましたが・・・」。
さらに古館さんは、「選挙前、誠実な馬淵さんは言っているけれど、党全体でいうと、聞こえのいいところに行った、ということがあるかもしれませんね」
と突っ込んだ。
区間を区切って無料にすることもありうる
馬淵議員はこう釈明した。
「有料になる高速道路がどこかは、地域の人にとって重要だから、具体的な路線名まで選挙前に明確にするのはどうか、という判断が(党内で)働いたのかもしれません」
渋滞に巻き込まれそうな高速道路として、「東名高速」「中央道」「関越」があり、ここも有料化されるのではないか、と古館さんが尋ねたが、馬淵議員は明言を避けた。
馬淵議員は9月3日朝も民放番組に出演、同様な趣旨を述べたほか、同じ高速道路でも、区間を区切って無料にすることも考えていることを明かした。
今回のマニフェスト、高速道路料金無料化については、東日本高速道路、西日本高速道路が反発。西日本の石田孝会長は、民営化されたばかりなのに事実上の国有化で、時代に逆行しているとし、渋滞による輸送時間の長時間化や、救急搬送車両への障害、フェリー、鉄道、航空会社への影響を懸念。JR東日本の清野智社長も09年8月2日、定例記者会見で、自家用車の利用が増加しCO2の排出が増えることや、維持費が税金でまかなわれることを批判した。朝日新聞が09年9月2日に発表した世論調査では、高速道路料金無料化のため高速道路の借金を税金から返済する政策に反対が65%、賛成が20%だった。