月刊誌が「NHKが昭和天皇をテーマにした大型ドラマを計画している」と詳細に報じている。NHKの大型特集「シリーズ・JAPANデビュー」に対し、「自虐史観に基づいている」と批判の声があがるなど、過去にも「歴史問題」を巡っていろいろトラブルが起きた経緯がある。計画が本当であれば、大きな反響を呼ぶのは必至だが、新たな火種になる可能性もある。
「戦略型企画 提案表」と題した企画書の写真を掲載
この「昭和天皇ドラマ」の計画を報じているのは、2009年7月26日発売の「月刊ウイル」(WiLL)09年9月号。「NHK・中堅番組ディレクター」を名乗る匿名の人物による内部告発という形で、18ページにわたって経緯が掲載されている。記事では、「社内の提案会議を通った企画書が回ってきた」として、「戦略型企画 提案表」と題した企画書の写真を掲載。作成日は08年11月12日とされており、提案者として実在するプロデューサーの名前も記されている。
企画書の写真から読み取れる範囲では、
「迪宮裕仁(みちのみやひろひと)親王と名付けられ、死後には昭和天皇と追号された天皇に初めて焦点をあてて、大正から激動の昭和を描く超大型ドラマ。『坂の上の雲』につづいて現代史に踏み込み、昭和の歴史を鮮やかに浮かび上がらせます」
「大正元年から100年にあたる平成24(2012) 年の放送を目指します」
と「ねらい」が書かれている。「実現する上での課題」の欄には、
「『オールNHK』体制による質的担保」
「段階的なチェックによるきめ細かな危機管理」
などのリスクヘッジ策が掲げられている一方、「提案のキャッチコピー」の欄には、
「この提案は、世界で最も有名な日本人を主人公に、大正・昭和の核心を描くNHKにしか出来ないドラマです」
と、企画には相当な自信がある様子だ。企画書によると、90分番組の10回シリーズを目指すという。
昭和天皇を描いた映画化・ドラマ化した事例としては、ロシアのアレクサンドル・ソクーロフ監督による「太陽」が知られている(国内では06年に公開)。この映画では、昭和天皇をイッセー尾形さん、香淳皇后を桃井かおりさんが日本語で演じ、ベルリン国際映画祭などで高い評価を得た。
だが、日本の大手メディアが昭和天皇をドラマ化するのはきわめて異例だ。
「NHK内部に実在する企画書なのは間違いありません」
NHKの大型特集「シリーズ・JAPANデビュー」では、「偏向した内容で精神的苦痛を受けた」などとして約8000人が集団訴訟を起こしたのは記憶に新しいところ。今回の「ドラマ化」報道についても、あからさまにNHKに対して警戒感を示す声もあがっている。 記事を見る限りでは、ドラマ化計画についてかなり詳細に書かれているように見えるが、NHK広報部では、
「月刊Willさんからは、そのような取材は全く受けていないし、私たちが知る限りでは、そのような事実は全くありません」
と、現段階では否定している。一方、「WiLL」編集部では、
「NHKから抗議書が来ていますが、記事中のドラマ以外の記述についての抗議です。ドラマについては、NHK内部に実在する企画書なのは間違いありません」
と反論している。