自分がニートであることに悩む26歳の男性に対し、元ボクシング世界王者の竹原慎二さんがしたアドバイスがネットでちょっとした騒ぎになっている。ニートになった原因は親のせいでもあり、働く気がないのならそのまま引きもっていればいい、とし、「部屋でだまってゲームやっとけ。それが社会の役に立つ正しいニート」などという少々過激なものだった。
「めちゃくちゃいいこと言うじゃないか 感動したわ」
「竹原慎二のボコボコ相談室」に2009年9月、「ニート歴10年、全く働く気なし」という26歳の男性から質問が寄せられた。この男性は学校でイジメにあったのが原因で、高校に行かず、仕事もせず、一日中パソコンに向かい、ネットやゲームをして引きこもる毎日。親は「働いて欲しい」と言うが全く働く気が起きず、「働いたら負けかな」と思うようにもなった。
「これからどうしたら良いかさえわかりません」という男性に対し、竹原さんは、「社会のために、そのまま引きこもっとけや」と回答した。
さらに、「親の育て方にも問題があっただろうから、親がニートの子供を養うのはしかたないこと。長引く不況で働き口が少ないため、ニートが働きに出なければ誰かが職にありつける。働く気もないくせに社会が悪いとか政治が悪いとか派遣切りを許すなとかエラそうなことを言ってはいけない」
などとアドバイス。
「部屋でだまってゲームやっとけ。それが社会の役に立つ正しいニートなんじゃ」
と締めくくった。
ネットの掲示板やブログの反応を見ると「これは問題発言。そのうち謝罪させられるな」という批判も見られたが、
「さすが竹原さんや!!」
「めちゃくちゃいいこと言うじゃないか 感動したわ」
「竹原は経営者サイドだから当たり前の理屈」
など、ニートをバッシング、竹原さんの回答を絶賛する意見も結構出た。
「この内容が高評価を受ける、ということがネット住人の見識の限界なのかもしれない」
といった疑問の声もあった。
「よくぞいってくれた」とカキコミしたのは弱者
ニート・引きこもり支援団体のNPO法人日本キャリアビジョン研究所(NCVI)代表の鈴木明さんによると、ニートが生まれる背景には、家庭環境や社会環境など様々な要因が複雑に絡まっているため、専門外の人がニートの相談を受けると、おかしな回答になってしまう場合が多い、といい、竹原さんの回答に首を傾げる。そして、今回の竹原さんの回答に匿名で「よくぞ言ってくれた!」などと書き込んでいるのは、
「隠れニートの人達なのかもしれません」
とも分析している。
ニート予備軍は中学生頃から生まれ、就職して「発症」する。特徴は、勉強をせずに夜通しゲームやケータイで遊び、学校では居眠り。実社会との関係が薄くなり、自分一人で居ることが最も快適に思えてくる。そんな自分を守るため、相手に意見を言わなくなったり、強い者に対し従順になったりする。
「自分では絶対言えない有名人の過激な発言。その尻馬に乗ってはしゃぐ。『よくぞいってくれた』というカキコミは弱者のすること。ニートの兆候が出ていると思っていいでしょう」
と鈴木さんは分析する。
では、ニートから抜け出るにはどうしたらいいのか。鈴木さんは「親力(おやりょく)」が最も重要だと説く。子供をしっかりしつけ、育てて社会に出していく力のことだ。ただし、親にだけ責任を押しつけることは不合理であり、「個人は社会環境の中でしか改善できない」のだから、途切れてしまった外部との関係を修復するため、地域社会と連動しながら社会復帰に取り組まなければならない、と話している。