トレーニングを義務教育のなかで実施していく
――理屈の上では「16歳選挙権」というのもわかりますが、現在の日本の高校生の社会的な成熟度からすると早すぎないでしょうか?
高橋 たしかに日本の高校生は諸外国に比べて幼いとよく言われますが、そうなってしまっているのは、自分で政治のことを判断できるようにする教育がしっかりされていないからです。選挙権を引き下げるのと同時に、政治を活用する力、すなわち「政治リテラシー」を高めるトレーニングを義務教育のなかで実施していく必要があります。
たとえばアメリカでは「争点教育」といって、政策のメリットとデメリットについて考えさせるプログラムがあります。Aという政策を選択するとこういうメリットとデメリットがあり、Bという政策だとこうだろうということを議論させるわけです。
――日本の中学で教える「公民」の授業とは違うのですか?
高橋 日本の学校で教えている政治関係の科目は、もう完全な暗記教科です。たとえば、「三権分立」や「弾劾裁判」という言葉は記憶していても、自分たちの生活を変えるために政治をどう活用すればいいのかまでは理解できていないことが多い。そうではなくて、選挙に行ったときにも役立つような、政治を活用する能力をきっちりと身につけていく必要があるんじゃないかと思っています。
――選挙権年齢の引き下げと政治教育はセットで行われるべきだ、と。
高橋 いまの制度だと、まがりなりにも政治教育を中学や高校で受けてから選挙権を得るまでにブランクができてしまうんですね。ところが、選挙権を16歳まで下げると、高校時代の政治教育は「選挙権を得た状態」で受けることになるので、授業も自分のためだと感じることができる。学校で政治教育を受けている間に投票できるというのは、有権者を育てるという意味では非常に大きいと思います。
――日本の政治教育の現状からすると、中学生や高校生をしっかり教えられるのかという不安もありますが?
高橋 たしかにそのよう意見もありますが、ヨーロッパなどではすでに当たり前のように政治教育が行われています。政治教育の充実を待つよりも、まず若者に投票を体験させて、実践を積みながら政治リテラシーのトレーニングをしていくことが大事じゃないかと考えています。16歳が選挙権をもつことになれば、それにあわせて日本の政治教育も変えなければいけない、という機運も出てくるはずです。
高橋 亮平さん
たかはし りょうへい 1976年、千葉県出身。明治大学理工学部建築学科卒業。
2003年、26歳で市川市議会議員に当選し、現在2期目。東京財団研究員として自治体のガバナンスを研究。全国若手市議会議員の会会長として地方議員のネットワークの構築を行ってきた。「NPO法人Rights」の副代表理事として、選挙権年齢の引き下げと政治教育の充実を働きかけているほか、「ワカモノ・マニフェスト」なども発信している。著書に『18歳が政治を変える!~ユース・デモクラシーとポリティカル・リテラシーの構築~』(現代人文社)