日本では住宅ローン完済する前に家が傾く?
そして、このアメリカの過酷な条件を生き抜いているのが「ツーバイフォー」(2×4)による住宅だ。ツーバイフォーはアメリカの木造住宅の大半で使われている工法である。これは何と言っても地震に非常に強い。阪神淡路大震災のときもツーバイフォーで建てられた家はほとんど倒壊しなかった。構造を面により支える工法なので、日本の伝統的な軸組工法(柱で支える方式)よりも振動に強いのだ。
さらにツーバイフォーは風にも火にも強いし、耐久性も高い。そのためアメリカでは100年経った木造の家がざらにある。ツーバイフォーは長い年月をかけて完成の域に達した工法なのだから当然といえるだろう。
「アメリカ人が借金をしすぎたために世界経済が傾いた」という意見。それは、そのとおり。でも、多くの個人にとって人生で最大の借金である住宅ローンについてみれば、明らかに米国の状況のほうがましだ。前述のように、米国の家は阪神淡路大地震くらいの揺れではまず大丈夫だし、本欄で繰り返し書いてきたように、米国の住宅ローンはいわゆるノンリコース・ローンなので、借金が残っていても家さえ返せば返済したことになる。
一方、日本では住宅ローンが完済される前に傾いてしまうのではないか、と思うような安普請の家がそこら中に建っている。日本で家を建てる多くの人が、住宅の資産価値(=カネ)どころか耐震性(=命)にも無頓着であるということなのだろうか? そんなことは絶対ない、と思いたいのだが・・・
++ 枝川二郎プロフィール
枝川二郎(えだがわ じろう)国際金融アナリスト
大手外資系証券でアナリストとして勤務。米国ニューヨークで国際金融の最前線で活躍。金融・経済のみならず政治、外交、文化などにもアンテナを張り巡らせて、世界の動きをウォッチ。その鋭い分析力と情報収集力には定評がある。