保険契約が伸び悩むなかで、大手生命保険が来店型店舗に活路を見出そうとしている。保険商品について相談しながら契約に結びつけていくものだ。「生保レディ」による訪問営業が頭打ちで、銀行の窓口販売とともに新たな販売チャネルに育てようという狙いだ。しかし、保険商品の販売ショップは外資系生保のアフラックや保険代理店専業が先行して、大きく水をあけられている。大手生保は巻き返せるのだろうか。
日本生命は87か店で都道府県を網羅
来店型店舗に、大手生保も力を入れ始めている。最大手の日本生命保険は2009年8月3日、愛知県豊田市と豊橋市に来店型店舗の「ライフプラザ」を新たにオープンした。
出店はすべて「自前」。08年3月には全都道府県の県庁所在地への出店を終えて、その後は大都市部を中心に店舗を拡大して、現在87か店。09年度の出店はこれで終了という。2010年度の出店計画については「現在検討中」だが、「ほぼ一巡したと考えています」(広報部)と話している。
第一生命保険は、東京・大手町と海浜幕張(千葉県)、ララガーデン川口(埼玉県)に「生活設計パーク」を設置する。「ふだん、なかなか接点をもてない方のための窓口で、契約の見直しや相談サービスを提供するとともに、利用者ニーズを汲み取って今後の営業施策に活かす」(広報部)のが狙い。同社は、直営店での保険加入者は「増加している」と話す。
明治安田生命保険は5月15日に、東京・新宿に直営店「保険がわかるデスク」と相乗りの「ほけんポート」を設置した。7月末時点の来店客数は前者が245人、後者は309人で、広報部は「当初の予想を上回る水準で推移している」と話す。今後1年をかけて、5か店の出店をめざす。
住友生命保険は他社と一線を画した。100%子会社を設立して、他社の商品も扱う「相乗り」の保険代理店「ほけん百花」を展開。店舗数は18か店。同社の場合、「どんな商品が売れているのかを探るための、アンテナショップの位置づけ」(広報室)なので、直営店は設けずにやってきた。
アフラックはすでに550か店も
こうした中で、来店型店舗で先行する外資系のアフラックは550か店もの「サービスショップ」を設置している(09年5月末現在)。そもそも「生保レディ」をもたない同社は、こうした来店型店舗や販売代理店、通信販売で契約を伸ばしてきた。
一方、「ほけんの窓口」や「みんなの保険プラザ」などの相乗り保険代理店を展開するライフプラザホールディングスは09年6月時点で全国に140か店を、また「保険市場」のアドバンスクリエイトは53カ店を展開している。フランチャイズ制を採り入れながら、機動的に店舗を設置。駅ナカやショッピングモールへの出店など立地条件もよく目立つ存在となり、「生保レディ」が手薄な中堅生保や外資系生保にとって、大きな販売チャネルに育ってきた。
これに対して大手生保は明らかに出遅れた。アフラックや保険代理店専業に店舗数では大きく水をあけられ、出遅れ分を、コーヒー店を併設したり、セミナーなどのイベントを開催して来店を促したりと工夫を凝らす。
また、日本生命はインターネットによる資料請求があった場合、その情報が最寄りのライフプラザに届き、そこから生保レディが申し込みのあった人を訪問する仕掛けを用意した。明治安田生命も、資料請求先に対して来店型店舗から連絡が行くようになっている。第一生命は「銀行窓販などの利用者をフォローする役割をもたせている」という。出店コストが「自前」だけに、採算ベースに乗せるにも時間がかかりそう。
販売チャネルの多様化は「時代の流れ」との判断があるようだが、「生保レディ」の扱いに手を焼いているようでもある。