労働・雇用政策はどの党も落第 「派遣禁止」に至っては世紀の愚策だ
インタビュー「若者を棄てない政治」第7回/人事コンサルタント・城繁幸さん

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雇用規制緩和で大手は派遣を直接雇用に切り替える

――なぜ「不況のいまこそ」なのでしょうか?

 さきほども話したように企業が人件費として払える総額は変わらないので、正社員のリストラや賃下げを禁止しても、そのしわ寄せが非正規や下請けに行くだけです。確かに大企業の正社員は守られるかもしれませんが、それ以外の企業や労働者は守られない。さらに、新規採用が抑制されるので、就職氷河期世代がまた生まれることになる。逆に、いま人材の流動化を実施すれば、「これから社会に出る人」に対するメリットが大きいはずです。

――それは、どういうことですか?

 実はいまでもすでに、外資系のコンサルタント会社などは「人材の流動化」が実現しているんですが、そういうところは、日系の大企業だったら絶対採用しないような人、たとえば4回留年している人とか、2年前に卒業したけど職歴がないという人を平気でとるんですよ。もし問題があれば、あとで賃下げしたり、クビ切りしたりできるからです。
   報酬も日系企業みたいに全員がエスカレーター式に上がっていくことはないので、能力がない人はいつまでも底のまま。だから、採用時にリスクがおかせるわけです。終身雇用の責務から解放してあげれば、日本の企業も同じことをやるはずです。

――労働ビッグバンにより、企業の採用の幅が広がると?

 そういうことです。雇用規制が緩和されれば、企業は30代のフリーターや派遣社員に対してもオファーを出しますよ。たとえば、大手メーカーはラインで使っている派遣社員を直接雇用に切り替えるでしょうね。派遣会社にお金を払うメリットがないですから。理論上は、派遣社員だった人の収入も3割ぐらい上がるはずです。

――人材の動きが硬直化すると、必要なところに適切な人材が配置されないわけですから、日本経済全体にとってもよくないですよね?

 そうですよね。新しい価値観やイノベーションを生むようなダイナミズムというのは、新陳代謝をおこなっていないと、絶対に出てこないですよ。その意味でも、全部ひっくるめてゼロ・リセットしましょう、ということです。

※インタビュー第8回は、ドットジェイピー関東支部代表の大久保勇輝さんです。


城 繁幸さん プロフィール
じょう しげゆき 1973年、山口県生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。人事部などを経て、2004年に人事コンサルタントとして独立。評論家としても活動し、雇用問題について若者の視点を取り入れたユニークな意見を発信している。著書に『若者はなぜ3年で辞めるのか?』『たった1%の賃下げが99%を幸せにする』など。

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