正社員時給1000円、派遣社員2000円ぐらいでいい
――派遣を禁止すれば、また元に戻ってしまうと?
城 法改正以前の正社員中心の制度に戻したとしても、人件費の総額が増えるわけではないのだから、また昔の失業率に戻るだけです。さらに言うと、2000年前後からメーカー中心に日本へ戻ってきている仕事があるんですが、それがまた中国やベトナムあたりに出て行ってしまう。長期的にみて、本当によいことなのか。
実は韓国がまったく同じ轍(てつ)を踏んでいます。ノ・ムヒョン政権が「2年以上、非正規雇用を雇用したら正社員にしなければならない」という法律を作ったら、リミット直前での解雇が続出している。100万人がクビを切られるという試算もあり、日本なら、その倍の200万人が失業する可能性があるわけです。それでいいんですか、ということですね。
――派遣禁止は雇用問題の解決にならないということですが、では、どうすればいいのでしょうか。
城 要するに、正社員も全部ふくめたうえで、「人材の流動化」をしましょうということです。いわゆる「労働ビッグバン」の実行です。小泉改革では、派遣法の改正によって派遣社員という非正規雇用の枠を拡大した。本当は、同時に正社員の賃下げ・クビ切りも認めなければいけなかったんですが、そこまではできなかった。
労働ビッグバンというのは小泉政権で少し掲げられていましたが、連合や野党の反対もあって、その後まったく言われなくなってしまった。結果として、正社員は従来どおり安定したまま。逆に、すべてのコストカットや雇用リスクは非正規側に押し付けられている。これでは、ダブルスタンダードですよね。
――リーマンショック以来の「派遣切り」はその象徴といえますね。
城 考えてみれば、非常に不思議な話です。本来だったら、安定していてリスクのない正社員のほうが賃金は安くすべきなんですよ。たとえば、正社員が時給1000円なのに対して、派遣社員は時給2000円ぐらいでいい。それが給料は安いうえに、クビも切られてしまうんですからね。
こんな不合理な事態が起きるのは、単純に規制による不合理な歪みのため。いまこそ、すみやかに労働ビッグバンを進めるべきです。「不況だからダメだ」という人がいますけど、逆です。不況のいまこそやるべきですね。