社員に「デート支援金」支給、「サイコロ」の出目によって給料が変動するなど「ユニークな社内制度」を持つIT企業がある。「浮ついている」と見られがちな面もあるが、人材獲得や定着を目的にした「戦略」という側面が強いようだ。
大阪デートで支援金「5万円」
モバイルサイトの運用・構築を行う「ゆめみ」(東京都世田谷区)には、「野菜支給制度」がある。ファストフードに頼り食事が不規則になる社員が多く見られた事がきっかけで青森県の企業と提携し、月に1人1000円分の無農薬野菜が支給されている。
「旬の野菜を使った料理をする社員も増えました。野菜料理を作って社内で振舞うことも。コミュニケーションの促進や、健康でないと良い仕事はできない、というメッセージも含まれています」(総務人事部・担当者)
「デート支援金」を支給しているのはコントロールプラス(東京都中央区)。運営する「デート通.jp」に体験談を書けば、東京駅から1kmあたり100円換算で旅行費用を支給してくれるというもの。例えば大阪駅なら500kmで5万円。恋人とはもちろん、友人や家族とでもOKだ。また、特に取材してほしいスポットがある場合、数倍の支援金がかかったリストが配布される。
「最大で1kmあたり1400円になったことも。同じ場所で支援金がもらえるのは1人だけなので、競合した時はクジ引きです」(社長室・担当者)
普段行けないホテルに宿泊したり、1ランク上のレストランで食事をしたりし、クリエイティブな感性を磨いてほしい、との期待もこめられている。
サイコロ「5」を出せば「1万円」アップ?
給料の決め方までユニークな企業もある。インターネット関連企業のイー・クラシス(東京都渋谷区)では、人事評価制度に「グレード制」を導入している。3か月ごとの人事考課で「1等級C」から「8等級A」といったランクが決まり、それによって給料が増減する。人事考課はチームの共通目標と、自分で決めた個人目標の「達成度」、さらに全社員が自分の仕事を評価する「360度評価」の結果によって行われる。もちろん部下も上司を評価し、場合によっては降級もありえる。
「目標設定には気を遣います。等級にあった難易度で、かつ良いサービスを生み出せる、売上に貢献できるような目標になるよう、面談で調整したりもします」(人事担当者)
全社員の目標達成率を公開するなど、評価方法を限りなくオープンにすることでモチベーションを高めているという。
「給料は上司の感情の振れで決まる部分があり、サイコロの出目の振れ幅に似ているところもある」という理由で「サイコロ給」を導入しているのは、ウェブ制作を行うカヤック(神奈川県鎌倉市)。基本給20万円で「5」を出せば「5%」の1万円が上乗せされるといった具合に、出目により毎月の給料「上乗せ分」が変動する。
「3年前には給料が『半分』か『倍』になるかという『リスキーダイス』もありました。さすがに『半分』では生活できないので廃止されましたが・・・」(広報担当者)
こうした「ユニーク社内制度」を取り入れる理由はなんだろうか。様々な企業の人事制度を紹介するサイト「じんつく」を運営するヴァンテージ・マネジメントの担当者は、若いIT企業が「社風」や「アイデンティティ」を代弁する「ツール」として面白い「社内制度」を利用しているのでは、と見る。
「他社との差別化を図る『ブランディング』であり、マスコミが採り上げれば『PR』にもなる。人材獲得や定着を目的にした『戦略』という側面が強いですね。『軽い』『浮ついている』という印象を想起させる危うさはありますが、考えているほうは意外としたたかなんですよ」