同時に更生プログラムを充実させるべきとの指摘
薬物犯罪については、海外では、厳しい刑罰が科される例が多い。
アジアでは、極刑になる国もいくつかあり、シンガポール、タイ、マレーシア、フィリピンでは、最高刑が死刑だ。中国、韓国では、営利目的のケースではそうなる。シンガポールでは、外国政府から減刑要請があっても、死刑になっている。欧米は、それほど厳しくないものの、イギリス、フランスが最高で無期懲役、アメリカが終身刑になっている
。日本では、営利目的の場合は、最高で無期懲役となっているが、所持・使用では10年以下の懲役だ。
海外での厳罰傾向を裏付けるように、薬物常習の末路は、悲惨らしい。
2009年8月20日放送のTBS系「ひるおび!」では、こうした海外の例のほかに、米オレゴン州の麻薬更生施設の収容者が薬物使用で変わり果てた姿を紹介していた。
ヘロイン中毒とみられる女性は、2年6か月後に、肌が荒れてボロボロになった様子が顔写真の変化で見てとれた。脳に過剰な興奮を受け、食べたり眠ったりしなくなってこうなるという。また、多剤乱用の中毒者らは、まゆ毛がなくなったり、顔全体に発疹ができたりしていた。
薬物中毒の患者を診ている銀座泰明クリニックの茅野分医師は、こうした例をもとに、厳しい刑罰はある程度仕方がないとする。ただ、その代わりに、薬物依存者の社会復帰を支援する更生プログラムが必要だと訴える。
「それは、子どもにしかるのと同時に教えなければいけないのと同じです。自分を見つめ直し、社会に適応できるスキルを身につける援助が求められているわけです。再犯者は、そうでないと、回転ドアのように、また中毒に戻ってしまいます。日本では、こうしたプログラムが乏しいと思っています。(酒井容疑者は)両親が離婚するなど不遇な幼少時代を送り、芸能界で成功しても、浮き沈みが大きい中で精神的な不安定さがあったのでは。また、依存症なら遺伝的な側面もあったと考えられ、精神科で治療させるなどもっと早く援助すべきだったのではないでしょうか」