「アナログ波跡地」オークション売却で、1.7兆円の収入
大阪大・大阪学院大の鬼木甫(おにき・はじめ)名誉教授(情報経済論)は、その背景に、「既得権益」の存在を指摘する。
「オークションが導入されて困るのは、今電波を使っている人。具体的には、電話会社や放送局などの既存ユーザーです。電波利用料を支払ってはいますが、本来の電波の市場価値と比べると30分の1~50分の1程度。ほとんどタダみたいなものです。」
しかし、日本では地上波の完全デジタル化を2011年に控え、これまでのアナログ波の「跡地」利用に注目が集まっている。09年6月に地デジに移行した米国では、アナログ波の「跡地」をオークションにかけ、携帯電話会社などが約200億ドル(2兆円)で落札している。鬼木氏が米国のケースをもとに試算したところによると、日本の「アナログ波跡地」を、すべて商用ベースでオークションで売却した場合、1.7兆円の収入が見込めるという。国内で電波オークションが実現した際には、いわば「電波埋蔵金」が出現する形で、「財源が不明確」との批判を浴びている民主党にとって魅力的なのは間違いない。
鬼木氏は、
「オークション導入がプラスになるのは、まず一般国民。これに新規参入を望む潜在的ユーザーです。これまで、通信事業者は事実上タダで電波を使ってきましたので、平気で無駄遣いをしてきました。ところが、オークションを導入すれば、一生懸命帯域を節約しようと努力するし、そのための技術も発展します。新規参入も増えますし、業界の活性化が進みます」
と、今回の動きを歓迎している。民主党政権が誕生すれば、通信業界にも大きな変化が起こるのは間違いなさそうだ。