これから秋冬にかけて、新型インフルエンザの大流行が心配されている中で、ワクチン不足が心配されている。日本で広く出回るのは11~12月になりそうだが、このころ新型インフルは流行の最中だと考えられ、予防には間に合いそうにない。さらに、ワクチンの数が足りないとなると今度は、誰にワクチンを接種するかも問題になってきた。
ワクチンの数が足りず、接種の優先順位が問題に
新型インフルエンザの国内感染者が2009年7月に入り、急増した。中高生の集団感染が続々と報告され、3人の死者も確認された。舛添要一厚労相は8月19日の記者会見で、国立感染症センターがまとめた資料をひきあいに、インフルエンザは本格的な流行期に入ったことを話した。
舛添厚労相はさらに、インフルエンザ対策として、症状の重症化を防ぐ効果が期待されるワクチンを、「5300万人分を用意したい」とした。しかし、国内で年内に製造できるのは1400万~1700万本。輸入によって2000万本を確保することも打ち出しているが、それでも「5300万人分」には届かない。
もっとも、ワクチンに関しては当初、2500万本が生産可能と試算していたが、ウィルスの増殖能力が予想よりも低かった。そのため、7月3日の記者会見で、年内生産量を1400万~1700万本に下方修正した経緯がある。
ワクチンの数が現実的に足りないとなると今度は、誰にワクチンを接種するかも問題となる。厚労省では8月20日、意見交換会を開き、ワクチン接種の優先順位について検討した。意見交換会に出席した専門家らの間では、医療従事者や持病のある人、妊婦、幼児への優先を求める声が多かったという。
これに対して、新型インフルエンザに詳しい、けいゆう病院(神奈川県横浜市)の菅谷憲夫小児科部長は、「(ワクチンは)世界的にいっても十分な数は間に合わないだろう」と指摘する。メーカーの生産能力の上限もあるが、安全性や有効性において万能というわけではない。頼りすぎるのもよくないだろう、とする。輸入するにしても、世界中で必要としているため、日本だけが買うわけにもいかない事情もある。
くわえて、ワクチンが増産され、日本で広く出回るのは11~12月になりそうだ、とする。その頃には、新型インフルエンザは流行の最中だと考えられ、予防には少し遅い。