旧特定郵便局長でつくる全国郵便局長会(全特)が2009年8月12日、会員1万9742人を対象にした民営化後の郵便局の業務の変化に関するアンケートの結果を発表した。衆院選に向けて全特を票田と考える各党は、全特の意向を踏まえて郵政民営化の軌道修正をマニフェストに盛り込んだ。調査結果が訴える「民営化後の不都合」は、与野党いずれが勝つにしても、選挙後の郵政見直し論議に大きな影響を与えることになりそうだ。
民営化前に比べ客数が減少、と訴える
アンケートは09年5~7月に実施された。回答数は1万7644件、回答率は89.4%だった。それによると、民営化前に比べた客数は、大幅減少27%、少し減少51%で約8割が客の減少を訴えている。現場に寄せられている客の苦情(複数回答可)で多いのは、(1)証明や書類が煩雑93%、(2)郵便物の誤配・遅配52%、(3)各種手数料の値上げ47%、の順だった。
(1)では、貯金や保険に申し込む際の本人確認に「地元の顔見知り」のなれあいは許されず、他の金融機関も同じ法令順守のために手間をかけていることを考えると、手続きが煩雑になるのはやむを得ないところ。(3)の各種手数料値上げは、例えば定額小為替手数料が1枚10円から100円に引き上げられるといった具合。
中でも苦情が全体として多いのが、郵便事業。アンケートは郵便事業へ苦情について詳しく尋ねている。
総選挙後4分社化見直しに動く?
客の苦情や不満のうち郵便事業会社に関するものが半数以上と回答した割合は63%に達した。また、年賀状販売での郵便事業会社と個別の郵便局との「無用な競合・トラブル」が「ますますひどくなった」との回答も33%に達した。日本郵政グループ内の各社との関係・連携が民営化後に悪化したと回答した割合は、郵便事業会社30%、ゆうちょ銀行18%、かんぽ生命13%で、郵便事業会社が金融2社を10ポイント上回っている。
全特はこの調査結果を、会社側との交渉材料のほか「より良い民営化のために、国会で行われる抜本的見直しに向けた検証の基礎資料として活用する」としている。郵便局長たちは、自らと業務が重複する郵便事業会社に対する客の苦情が目立っていることを重視しており、国会の見直し論議で目指すのは、両社の一体運営というわけだ。
各党のマニフェストにも、金融2社と郵便事業、郵便局の4分社化を「一体運営する」「見直す」とある。具体的に組織体制をどう見直すかはまだ語られていないが、組織を見直せば誤配・遅配はなくなるのかという疑問をよそに、国会論議は全特目線の組織論に終始する恐れも出てきた。