漫画が持っているテイストに近づけ過ぎた
実写版「こち亀」苦戦の理由を、放送評論家の松尾羊一さんは、こう話す。
「漫画が持っているテイストに、(ドラマを)近づけ過ぎているように思います。『こち亀』はすでに(コミックスが100巻を越え、アニメ化や舞台化されていて)よく知られているだけに、その面白さは周知の通り。それなのに、漫画の持っている面白みを、そのまま持ち込んでしまった。漫画から素材を得たにしろ、ドラマでは、それを越えていかないと」
松尾さんはさらに、ストーリーが単調だ、とも指摘する。ドラマの面白さは原作の脚色にある。映像化するにあたっては、原作が持っているイメージをふくらませる必要があるだろう、というのだ。
「原作に忠実過ぎるために、笑いの演出でも、ドタバタがあるだろうということがすでにわかっていて、くどい印象を受ける。笑いとは、意外性に直面したときに起きるもの。でも、登場人物のオーバーアクションが続いて、見ている方にもなんとなく、(笑いを)見透かされているようにも思います」
いっそのこと漫画とは全く異なる新しいイメージ――あえてシリアスなストーリーで展開していくなど、型をくずしてもよかったのでは、とも感じている。