景気悪化の影響で、企業はどこもコスト削減を進めている。なかでも頭を痛めているのがエネルギーの分野だ。企業はIT化によって紙資源の節減や業務の効率化が簡単にできると思っていたが、落とし穴もあった。取り扱う情報量が猛烈にふくらんだからだ。当然消費する電力は増える。そして最近は二酸化炭素(CO2)の削減など企業の社会的責任の観点からも、エネルギーコストの削減は避けて通れなくなっている。
IT機器による消費電力量はうなぎのぼり
日本電気(NEC)が206人の企業経営者に聞いた「企業経営者に聞く 企業経営のエネルギーコスト意識調査」によると、「自社の消費電力は年々増えていると思う」と回答した経営者は38.3%、さらに「自社の消費電力のうち、PC、サーバーの占める割合が年々増えていると思う」と答えたのは37.9%だった。
さらに、経営者の66.9%が「照明やPCの付けっぱなしなど無駄な電力消費がある」と思っていて、経営者の自己評価は平均44.9点。「まだまだ、やれることがある」ということらしい。
それにもかかわらず、具体的なコスト削減策となると「検討中だが未着手」が46.6%に上り、「検討もしていない」が約3割を占めた。
ITを使った情報処理が当たり前になる中で、気持ちばかりが先行しているようすがうかがえる。
一方、インターネットを通じてやり取りされる情報量は、爆発的に増えている。経済産業省の試算では、IT機器による消費電力量は2006年に470億kWhだったものが、2010年に1.3倍、2015年には2.1倍、2020年3.5倍に膨れ上がるとみている。2025年には約5倍の2400億kWhにまで増大。この数字は、日本全体の総発電量の約20%にあたる。
情報量の増加に比例して電力消費も増大する形で、情報量の増加は企業のエネルギーコストにそのまま跳ね返る。日々のことなので、知らず知らずのうちに、また想像以上にコストが膨らんでいる可能性はある。
7割以上の経営者がITコストを正確に把握していない
前出の調査では、自社のITシステムにおける導入コスト、運用管理コスト、電力・冷却コストなどについて、「把握していない」経営者は3割を超えた。「どちらともいえない」(39.8%)をあわせると、7割以上の経営者がITコストを正確に把握していないことになる。
エネルギーコストの削減の調査を実施したNECは「情報量が増えてIT機器が増えれば、使っている電力も増えます。まず、きちんと電力量を把握することが重要です」と、IT電力量の「可視化」の必要性を説く。
たとえば、マシンルームをみても「熱だまり」や「局所冷却」があるケースが意外にあり、こうした原因を解決するだけで消費電力を抑えられる。一つひとつを計測し、把握して「可視化」することが、コスト削減策の第一歩というわけだ。
「可視化」は現場レベルの意識改革にもなる。最新のPCにはエコボタンやエコモードなど必要以上に電力をとらない省エネ設計が施されている。NECが現在実用化をめざしているPCには、PCがユーザーの使い方を検証してPC画面に使用電力の状況を知らせる機能を付けている。
「太りぎみの人が体重計に乗ると食事の量を抑えようと注意するように、PC画面を見て、電力の使いすぎを意識するだけでも効果がある」
IT電力量の把握には、マイクロソフトが2008年12月から「SaveMoney.キャンペーン」を展開、「簡単コスト削減試算ツール」を無償で公開している。またNECなどもセンサーを取り付けて計測する、コンサルティングを通じて企業をサポートしている。