自民党も民主党も向いている方向は同じ
――もう一つの反論として、長いあいだ年金を納めてきたんだから、それを払ってもらう権利があるという意見もあります。
赤木 年金制度の目的が本当に老人の生活を下支えすることにあるとしたら、厚生年金と国民年金で圧倒的な差が生じるという、おかしな事態は起きないはずです。本当の社会福祉としての年金であれば、支払った額や期間が支給額に連動する方式でなく、老人のだいたいの生活水準をざっくり見積もって支給すればいいんです。
――少し前には、年金を納めた期間や金額がわからなくなったといって、大騒ぎしましたよね。
赤木 年金の再計算にしても、年金特別便にしても、あれでどれだけお金を使ったんだろうと思います。年金に関しては、すぐお金が出るんですよ。でも、払った金額を1円単位で問題にして、そこから支給額を決めるのは、年金を一種金融商品としてみているということ。福祉とは考え方が違います。
――年金に関しては、財源をどうするのかというのも大きな課題です。
赤木 財源も重要ですが、本当に必要なのはプライオリティの設定です。若い人の経済力を強くして将来に希望をもてるようにするのか、それとも、年齢に関係なく自由競争にしてしまって、こぼれ落ちた人のためのセーフティネットを整備するのか。あるいは、老人に力を与えるようにするのか。そのような優先順位を明確にしたビジョンがどの政党からも見えません。
――いっそ「老人政党」と「若者政党」にわかれてくれたら、わかりやすいんですけどね。
赤木 そのほうがありがたいですね。投票しがいがあります。年金に対する姿勢という意味では、自民党も民主党も向いている方向は同じですから、あまり面白くはないですよね。
※インタビュー第4回は、非モテSNS管理人の永上裕之さんです。
赤木 智弘さん プロフィール
あかぎ ともひろ 1975年、栃木県生まれ。月刊誌「論座」2007年1月号に掲載された論文「『丸山眞男』をひっぱたきたい――31歳、フリーター。希望は、戦争。」がロストジェネレーションの若者の本音を鮮烈に伝えているとして反響を呼んだ。現在はフリーライターとしてさまざまな媒体で著述活動を行う。著書に『若者を見殺しにする国』(双風舎)、『「当たり前」をひっぱたく』(河出書房新社)。