ワクチンの開発が遅れている?
とりわけ、神谷研究員は、「秋から冬にかけての次の山、第2波が心配だ」と指摘する。過去のアジアかぜや香港かぜのケースでは、第2波で感染がさらに増えたり、重症化したりした事例があるからだ。また、アメリカの患者から採取して作るワクチンの開発が遅れているとの話もあり、「(ワクチンの用意が)予定より少なくなるかもしれない」と危惧していた。
今回の新型インフルエンザの症状は弱毒性とも言われており、「鳥インフルエンザに比べれば症状は穏やか。死に至るとは考えづらい」(神谷研究員)のも確かだが、持病のある人や高齢者、妊婦には注意が必要だ。一方、オランダ・ユトレヒト大学の西浦博研究員らが、アメリカとカナダのデータをもとに致死率を算出したところ0.5%だったという報告もある。この0.5%という数字は、1957年にアジアで流行した「アジアかぜ」並みと見られており、季節性インフルエンザの0.1%よりも高い。
新型インフルエンザの自覚症状――高熱、倦怠感、関節の痛みなどが生じた場合は、一部の専門医を除いて、原則としてどの医療機関でも対応できるという。都道府県では、厚労省の感染症法施行規則の改正を受けて、これまで設置されていた発熱外来は全国的に廃止・縮小している。発熱外来とは、新型インフルエンザの症状が見られた場合、指定の医療機関で受診を受けつける方式だった。現在では、一部の医療機関に集中することを避けて、このような処置をとっている。
ただし、たとえば東京都では医療機関には事前に連絡をいれ、受診時間などについて指示をあおぐことや、医療機関をたずねる場合はマスクの着用をするよう呼びかけている。飛沫感染が心配されるため、まわりへの配慮が必要だ。厚労省でも、全国の自治体に向けて、院内感染に配慮した努力をするよう伝えているという。