選挙期間中は「ウェブサイトは更新も出来ないし、ダイレクトメールも送れない」という公職選挙法の解釈が定着し、ミクシィ(mixi)で情報発信をしている政治家にも、その影響が及んでいる。自分のミクシィ日記の更新が出来ないのはもちろん、他のユーザーの日記を読むことすら、公職選挙法に抵触する可能性があるというのだ。
積み重なり具合、頻度による?
2009年8月18日の衆院総選挙公示を控え、各陣営は、8月17日までにウェブサイトの更新を終えた。公職選挙法では「文書図画の頒布」が厳しく制限されており、ウェブサイトの更新も、これに含まれると総務省が解釈しているためだ。
これは、「閉じられた空間」だとされるSNSでも例外ではないようだ。広島4区から立候補している自民党の中川秀直元幹事長(65)は、09年5月から、ミクシィ上で日記を公開している。日記は「マイミクシィ(マイミク)」のみを対象に公開されているが、ミクシィ利用者であれば、誰でも申し込めば中川氏の「マイミク」になることができる。現在の「マイミク」の数は1万8000人を超えている。
日記では、毎日のように、テレビ出演や街頭演説をこなす様子が綴られているのだが、衆院選公示直前の8月17日の日記は、こんな内容だった。
「もっと日記で政治のことを分かりやすく解説したかったのですが、選挙期間中は日記を書くことが禁止されます。 ミクシィも、選挙期間中に日記を書くと、みなさんにメールがいきますのでそこが選挙違反になるおそれがある、マイミクの方の日記を見ようと思っても、『戸別訪問禁止』に違反するおそれがある、とのこと」
「選挙期間中に日記の更新が出来ない。メールも送信できない」というのは一般的な解釈のようにみえる一方、「他人の日記を読めない」という「縛り」は異例だ。他人の日記などにアクセスした際に残る「足あと」に問題があると解釈されている様子だ。
ミクシィの「足あと」をめぐっては、07年4月の埼玉県所沢市議選で、ある候補者が、ユーザーのページに手当たり次第に足あとを付けたことが「自分のページに利用者を誘導しようとする売名行為」だと批判を浴び、警察署に通報される騒ぎにまで発展したケースがある。このときは、選管は夕刊紙に対して「『足あと』は積み重なり具合、頻度による。最終的には捜査当局の判断になる」との見解を示しており、この候補者は当選している。今回のケースについても、この騒動が尾を引いている可能性がありそうだ。
「選挙が終わったら、党派を超えて、取り組んでいく」
公職選挙法では、選挙期間中に投票依頼のために行う住居や事業所への戸別訪問を禁じている。戸別訪問が買収や脅迫の機会として利用されやすいことがその理由だ。中川氏は、この「足あと」を付ける行為が「戸別訪問」にあたると受け止めているようだ。
「萎縮しすぎなのでは」との声があがりそうなほどの用心深さだが、中川氏は、事務所を通じて
「私の日記に『戸別訪問禁止』に違反するおそれがある、としたのは、私なりに、この分野の専門家と相談して、そのようなアドバイスを頂いた結果です」
とのコメントを寄せた。
なお、中川氏は、日記の中で
「頂いたメッセージを見て、いまのインターネットを使った選挙広報活動を禁止している規制は、国民目線に立っていないと改めて感じました。 インターネットを使った選挙広報活動の解禁は、選挙が終わったら、党派を超えて、取り組んでいきたいと思います」
と、現状への不満を綴ってもいる。
広島4区からは、中川氏以外にも民主新人の空本誠喜(そらもと・せいき)氏(45)と幸福実現新人の沖ゆり氏(54)が立候補しているが、両候補とも8月17日までにウェブサイトの更新を終えている。