広告主の意識変わった TV「この世の春」の終わり
(連載「テレビ崩壊」第4回/日本アドバタイザーズ協会 小林昭専務理事に聞く)

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   新聞の倍以上の広告費を集めるテレビも広告の落ち込みに苦しんでいる。2008年後半からの経済危機の影響だけなのか、それとももっと構造的な変化が起きているのか。広告主の意識の変化について、社団法人日本アドバタイザーズ協会の小林昭(ひかる)専務理事に話を聞いた。

爪に火を灯して出す広告費をもとにテレビ局は高給取り集団になっていた

「1社提供番組が減り、4社から6社、なかには12社でもつという形も出てきた」と話す小林昭専務理事(67)
「1社提供番組が減り、4社から6社、なかには12社でもつという形も出てきた」と話す小林昭専務理事(67)

――08年のテレビ広告費は、前年比4.4%マイナス(電通調べ)でした。民放連は、広告を中心とする地上波テレビ営業収入について、09年度は6.2%減と3年連続の減収を09年1月段階で予測していました。現状はどうなっているのでしょうか。

小林 09年4-9月期の前半は、前年比10%減以上の2ケタダウンだったのではと推測しています。番組と番組の間に流すスポット広告はかなり減ったのではないでしょうか。スポット枠を埋めるため、自局番宣や自局関与の映画宣伝、AC(ACジャパン、旧公共広告機構)のCMが増えていますね。
   しかし、ここにきてエコカー減税やエコポイント導入の影響で、景気に薄日が差してきた観があり、広告出稿も少しよくなりそうです。8月末の衆院選へ向け、各党のスポット広告も入ってくるでしょうから、これも好材料ではあるでしょう。とはいえ、前年並みに戻るところまではとても行きません。10月以降は、政権交代含みの選挙結果の影響もあるので予測は難しいですが、民放連予測の6.2%減でおさまればいい方でしょう。

――テレビ広告減は景気の影響でしょうか。新興のインターネットにくわれた部分もあるのでしょうか。

小林 1番影響が大きいのは、やはり景気です。もちろんインターネットの影響もあります。広告主の意識も変わり、「何が何でもテレビ」という感覚ではなくなってきました。テレビだけに集中投下するのではなく、販売促進キャンペーンやネットを連動させ、以前より大きな効果を出そうとし始めています。広告費総枠を増やせる情勢ではないのでネットに流れた部分はあるでしょう。

――ネット広告費は、ラジオや雑誌を追い抜きました。テレビは優位を守れるでしょうか。

小林 少なくとも5-10年というスパンでは、ネットがテレビを凌駕するということはないでしょう。一瞬にして、広くまんべんなく情報を送ることができる、という点でテレビの存在感はまだまだ大きなものがあります。また、個人的意見ですが、テレビはゆったりと待ちの姿勢で流れてくる情報を楽しむもの、ネットはユーザーが前のめりになって自分から情報を取りにいくもの、と両者には差があります。前者の楽しみ方をする人は、やはりこれからもいるでしょう。

――では、景気が回復すればテレビ広告も戻るでしょうか。

小林 ある程度は上向くでしょう。しかし、完全に以前のように戻ることはないと思います。広告主は以前よりアカウンタビリティー(説明責任)を求められています。3か月ごとの四半期で、場合によっては月次で成果が要求されている所もあります。そうした中、テレビ広告の効果・成果はすぐには見えないということが影響し、テレビ広告を見直すところはある程度増えるでしょう。替わりに販促キャンペーン導入が目立ってきました。

――景気の影響ではなく、戦略的にテレビ広告を減らす広告主も出ているのでしょうか。

小林 名前は言えませんが、ある大広告主がびっくりするぐらいテレビ広告を減らそうとしています。まあ、耐久消費財関係のところと言っておきましょうか。あくまで実験的な試みではあるようですが、その結果次第では他社へも大きな影響を与えるかもしれません。

――構造的な変化の兆しについて、テレビ局側は危機意識をもっているのでしょうか。

小林 制作費が大幅に減らされたこともあり、さすがに危機感は出ています。しかし、例えばスポット広告のあり方について、我々が現行の「15秒枠」にとらわれない柔軟な対応を求めても、「そうですね」だけで実行に移す気配はありません。まだまだ危機意識は足りないようです。
   もっともテレビが危機だ、などと言い始めたのは、わずかこの6、7か月のことです。それまではこの世の春を謳歌していたのです。我々が爪に火を灯すようにして出す広告費をもとに、テレビ局は高給取り集団になっていた訳です。ようやくリストラ云々の話も出始めましたが、普通の民間企業はとっくにリストラをやって、さらにどう削るかと戦っているのです。これまでのテレビ局員は浮世離れしていたと思いますね。テレビに本当の厳しさがくるのはこれからです。
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