個人投資家が2009年7月末時点で、3か月後の日経平均株価を予測したところ、71.8%が「上昇する」と答えたことが、野村証券金融経済研究所の調べでわかった。8月30日の衆院選を経て、大勢は民主党政権の誕生を織り込んでの予測だが、自民党が政権を維持したら、株価はどう動くのだろうか。
「変化」を求めれば株価上昇
8月30日に迫った衆院選は「政権交代」選挙とされる。いまのところ、民主党の優勢が伝えられ、自民・公明の与党がどこまで踏ん張れるか、が焦点になっている。
過去の選挙で自民党がもっとも大きな敗北を喫したのは1993年7月の衆院選。自民党は過半数割れして下野、細川内閣が誕生したときだ。ところが、株価は一時的に上昇したものの、しばらくすると政権の不安定さが露見してジリ貧に陥った。
基本的に、不景気のときの選挙は自民党に不利に働く。好景気のときは現状維持を望み、不景気のときは「変化」を望む人が増えるからだ。それもあって、細川内閣が誕生した際も当初は大きな期待が寄せられたのだが、結局景気が上向くまでに5か月を要した。 「不景気→自民圧勝」の例外は、自民党でありながら「自民党をぶちこわす」とほえて選挙に臨んだ2005年9月の小泉内閣の衆院選。大和総研の調べによると、株価は衆院解散時に一時的に下げたが、選挙後すぐに上昇し60日(営業日)を過ぎても上がった。
民主党の政策は即効性に欠く
日経平均株価は8月に入っても1万円台をキープしている。8月17日は3日ぶりの大幅反落となったが、終値は前日比328円72銭安の1万268円61銭だった。大手証券の関係者は「一時的なもので上昇基調に変わりはない」と話している。
いまの株価は、エコカー減税やエコポイント制度の導入などの麻生内閣の経済対策が効を奏している。政府閣僚による景気の「底入れ宣言」もあった。マーケットには外国人投資家も戻ってきて、7月の買い越し額は08年5月以来の1兆円超となるなど、明るい兆しにある。
こうした株価の動きはすでに「民主圧勝」を織り込んだものといわれているが、麻生内閣の成果といえなくもない。自民党が政権を維持したら、株価はどう動くのだろう――。
第一生命経済研究所の主席エコノミスト・嶌峰義清氏は、衆院選自体が大きく株価を揺さぶることは考えにくいと前置きして、こう観測する。「景気が予想以上に弱いとの見方から、追加の経済対策がポイントになるでしょう」。
最近の景気の回復ぶりをみても明らかなように、エコカー減税のような「買わないと恩恵がない」政策は消費を刺激しやすいが、定額給付金のような「買わなくても恩恵に与れる」政策は、需要の刺激効果がいま一つ。民主党の提唱する育児給付金などは後者にあたる。
嶌峰氏は「民主党の政策は即効性に乏しいといえ、株価が軟調に推移するかもしれません」とみている。
自民党の政権維持は、いわば「サプライズ」。ただし、安定感や当座の景気対策への信頼感など「手堅い」面がある。足元で株式を売買している人の多くが、短期投資を中心とする外国人投資家なので、「自民党の政権維持ならば、一たんは株価の上昇要因になる」という。