マスコミは本来、受け手の方を向いていないといけない
――では、取材する側については、どのように感じておられますか。
梨元 本来、ニュースを伝える側からすれば、ニュースの肖像権は気にする必要はないのですが、最近は局の側から「これは肖像権、これは音事協…」と自主規制してしまっている。打ち合わせの場で、担当ディレクターが「音事協に入っていないところ、プロダクションが弱いところをやりましょう」という発言をするんです。そりゃ、僕もカンカンに怒りますよ。最近の例でも、「羽賀研二、どんどんやれ。草なぎ、ジャニーズだからやめとこう」となるんです。
――先日のSMAP草なぎ剛さんの復帰会見でも、特定マスコミしか出席が許されなかった上、「突っ込みが甘い」との批判がありました。
梨元 凱旋会見とか「奇跡の生還」じゃないんですから。お酒の「お」の字も出てこなかった。一方、スマップの番組では、キムタクが「おれたちは(逮捕は)2度目」との発言がありました。中居が止めようとすると、キムタクが言ったのは「包み隠すのはやめよう。それをやっていたら、SMAPの先はない」。あれは、「良く言った」と思いました。
ところが、その直前に行われた記者会見は「凱旋会見」。なぜ、これが逆じゃないんでしょうか。情けなくなります。でも、怒られている側は、その理由が分からない。先輩から、やり方を伝授されているだけだからです。全く「取材」ということじゃないんですよ。
記者が記者会見ばっかりに頼っているのもおかしい。本来は、記者が特ダネを抜いて、抜かれた側が「どうぞ取材してください」と、半ば開き直って開くのが記者会見なんです。これに疑問を持たなくなっている。このあたりに、もっと早く気づけば良かったと思います。岐路は、ここ10~15年ぐらいでしょうか。
――最近は、芸能人がブログで一方的に発表することも多いですね。
梨元 ブログで発表したのであれば、まずそれをストレートニュースで流して、その先をちゃんと取材すればいい話です。ただ、ブログを本人以外の声でナレーションを入れて読み上げているのには違和感を覚えますね。雑誌の内容を抜粋して読み上げるだけだったり…。本当に何も歯止めがないですよ。
マスコミという「伝える側」は、本来は受け手の方を向いていないといけないのに、それがすっかり忘れ去られてしまっています。
これは政治部も社会部も、同じような時があるかも知れません。よく「たかが芸能」と言われますが、「たかが芸能、されど芸能」。一般の報道などが抱えている問題が、芸能の分野でわかりやすい形で現れている。そういうことに過ぎないんです。