福岡県の2つのホテルが、2009年7月14日、ドイツの審査機関からエコホテルとして認められた。この機関による日本国内での認証ははじめてという。これらのホテルではいったい、どんな取り組みをしているのだろうか。
生ゴミを堆肥化、「循環米」育てる
環境大国ドイツの技術審査協会テュフ ラインランドは、西鉄シティホテル社(福岡市中央区)が県内で運営する「西鉄グランドホテル」と「ソラリア西鉄ホテル」を地球環境に配慮した「エコホテル」として認証した。
エコ認証は、テュフ ラインランドを通じて、全世界で300件以上のホテルが受けている。日本では今回が初めて。審査では、省エネルギーや節水、廃棄物管理に関する項目などがチェックの対象。14の部門と192項目ものチェック項目が掲げられ、うち50%以上の達成基準が設けられている。
認証に携わったテュフ ラインランド・ジャパンの岡田綾子さんによると、福岡の2つのホテルではとりわけ、循環型のリサイクル方法に秀でていたという。たとえば、レストランの厨房から出される生ゴミの分別を徹底。また、ザルによる水切りをすることで、ゴミの減量にも役立てている。さらに、2005年から生ゴミを堆肥化する機械を導入、堆肥を利用して「循環米」を栽培し、これをレストランでも使っている。
そのほか、アメニティグッズの包装の簡易化や、客室家具の修理や再利用に熱心に取り組んでいる。最近ではロビーの照明を電球からLEDに切り替え、CO2排出量を抑えたりもしている。西鉄シティホテル社では、こうした取り組みを10年来続けている。
そのため、2008年10月には、福岡市環境行動賞「ごみ減量・リサイクル努力事業者賞」と福岡県エコ事業所・最優秀賞「その他の地球にやさしい活動部門」の2つを同時受賞し、話題になった。同社は環境団体「九州グリーン購入ネットワーク」に所属し、積極的な活動も行っている。
他のホテルとの差別化、アピールとしても機能しそう
観光業に詳しい船井総合研究所のチーフコンサルタント・大坪敬史さんは、「このような大々的な取り組みはたしかに珍しい」とした上で、ホテルによるエコの取り組みはここ数年、ヨーロッパを筆頭に実行されつつあるという。
日本のホテルでも5~6年ほど前から、連泊の場合はベッドメーキングを省略したり、アメニティグッズをカットしたり、チェックイン前の部屋の冷房をオフにしたり、といった取り組みをしているところもあるようだ。そうすることで、宿泊費の一部をキャッシュバックしたり、何らかのサービスを付けたりしている。
「これらの手法を取り入れてみたところ、感度の高い利用者が意外にも多く、予想以上の好感触でした。ちょっと(価格が)安くなるからというのもあると思いますが、それ以上に、同じ泊まるにしてもエコになるならば、と気にされている人が多いようです」
くわえて、大坪さんは「『エコ』は今後のキーワードであるのは間違いない」とも指摘する。環境配慮はホテル側にとってのコスト削減にもつながるし、他のホテルとの差別化、アピールとしても機能しそうというわけだ。