客待ちタクシーが渋滞や事故を増やしているとして、警視庁が違法駐車などの取り締まり強化に乗り出すことが分かった。タクシー業界では、供給過剰が原因と主張しているが、一部でこの説に異論も出ている。
ドライバーに注意「口汚くからまれた」
タクシーのマナー向上が求められる(記事とは関係ありません)
都内繁華街やターミナル駅周辺での、タクシーの傍若無人ぶりはひどいらしい。
客待ちタクシーの問題を考えようと2009年7月28日に都内で開かれた業界の緊急代表者会議。そこで、警視庁や国土交通省の幹部が、ドライバーのマナーの悪さに次々と苦言を呈した。
東京交通新聞のサイトに載った動画によると、警視庁交通部理事官の留安敬一警視は、会議での講話で、6月から毎週金曜の深夜に六本木から東京駅までを巡回すると、タクシーによる「駐停車禁止の山のような塊」があったことを明かした。あまりのひどさに、職務質問をしたほどだったという。
また、国交省の関東運輸局幹部は、会議で、銀座を見て回ったときのことを話し、ドライバーに注意したものの、からまれてしまった体験談を披露した。「口汚いからまれ方をして、何度も暴力に近いようなことを受けた」ともいうのだ。
タクシーの違法な客待ち駐停車は、繁華街などで問題を起こしている。警視庁によると、深夜の110番は、タクシーを巡るゴタゴタや駐車違反などの問題が多いという。しかも、取り締まりの警官も、その駐車のつながりぶりやドライバーの吐く暴言などに手を焼いているらしい。
さらに、タクシーを巡る事故も多い。都内の人身事故の15%にタクシーが関与していたといい、六本木地区では6割以上がタクシー関連とさえいう。東京MXテレビが6月24日に報じたところでは、08年後半のリーマンショック以降、不況のために利用者が減って、タクシーによる客の奪い合いが起きた。そして、事故が多発に転じるようになり、タクシー関連の事故は、09年は、5月末までに、前年同期より148件多い3436起きている。それも、個人タクシーよりも法人タクシーの割合が多いという。
原因は、供給過剰?良質ドライバー不足?
警察サイドでは、タクシーのマナー低下が、治安の悪化にまで及んでいるとみる。
警視庁の留安敬一警視は、東京交通新聞のインタビューに対し、タクシーを巡る110番通報で、警察の貴重な要員が割かれると訴えた。そして、深夜10~11時に、窃盗やクスリ密売の事件を十分捜査できなくなっているというのだ。また、事故が多くなっているのも、警察の力を削いでいるとした。
そのうえで、留安警視は、タクシーによる違法駐停車などの取り締まりについて、「淡々とやっていく」と述べた。そして、「脅し文句になるかもしれませんが、やることはやるということを、皆さんが分かっていただけたらいい」と取り締まり強化の方針を示した。警視庁では、2009年6月24日にタクシー関係団体と連絡会議を開くなどして、事故防止を訴えている。
タクシー業界では、取り締まり強化に危機感を持っているようだ。
前出の緊急代表者会議では、東京乗用旅客自動車協会の副会長が、インタビューに「取り締まりをどんどんやるのは、企業がたまったものではない」と漏らした。02年2月の道路運送法改正で規制緩和されてから、都内で1万台ほど増えていると指摘。そして、供給過剰がこうした問題を生んだとして、都市部での規制を可能にした09年10月1日のタクシー特措法施行に向けて、減車に取り組むことを明らかにした。
一方、規制緩和を訴えているMKタクシー(京都市)では、供給過剰がマナー低下に結びつかないと反論する。
「安心して乗れるお得なタクシーは、むしろ不足しています。われわれは、お客さまに選んで乗っていただくスタンスですので、電話予約注文が主体です。専用の乗り場も作っており、路上で待ったりはしていません。事故についても、ドライブレコーダーを搭載したり、教習所と連携して指導教育したりしており、むしろ減少傾向にあります」(経営企画部)
いずれにせよ、タクシー業界には、マナー向上への取り組みが求められそうだ。