覚せい剤所持で逮捕・送検された酒井法子容疑者(38)が不起訴処分になる可能性をスポーツ紙各紙が報じて、波紋を呼んでいる。所持がごく微量で、使用についても物証が乏しいというのだ。これだけ状況証拠があるのに、なぜなのか。
所持が微量過ぎる、と弁護士指摘
「えっ本当? 不起訴も」(スポニチ)
「逃げ得『無罪』!? 立件困難で起訴猶予も」(スポーツ報知)
こんな意外(?)な見出しをスポーツ紙が2009年8月11日、大きく掲げた。
東京・港区の自宅マンションで、アルミ箔に包まれた覚せい剤0.008グラムを所持したとして、覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕・送検されたタレントの酒井法子容疑者。嫌疑なしとは言えないものの、所持が微量過ぎるというのだ。
両紙とも、内容に共通部分が多く、共同通信の取材を下敷きにしているらしい。薬物に詳しい小森榮弁護士の話として、覚せい剤所持で起訴されるのは、1回平均使用量0.03グラムを超えるケースといい、酒井容疑者のケースは、「通常なら起訴猶予になるケース」という。そして、検察幹部が、「鑑定するとほとんど残らず、公判で鑑定の適法性などを立証するのが困難になる」と起訴に慎重になっていると伝えている。
また、覚せい剤の使用については、酒井容疑者は6日間も行方不明だったため、逮捕後の尿検査では覚せい剤反応は検出されず、物証が乏しいという。
新聞各紙では、使用済みも多数含まれるストロー42本が自宅から見つかり、付着物のDNAが酒井容疑者のものと一致したと報じている。さらに、酒井容疑者は、「夫に勧められ、08年夏から数回、吸引した」と供述し、逮捕された夫の高相祐一容疑者(41)も「会うたびにやせていた」と常用をうかがわせる供述をしているという。
しかし、警視庁などへの共同の取材内容によると、決め手はあくまで尿検査で、DNA鑑定などでは使用時期が特定できず、起訴するのは難しい見通しもあるというのだ。
起訴する見通しを述べる司法関係者も
とはいえ、メディア報道の中では、起訴する見通しを述べる司法関係者はいる。
東京地検出身の大澤孝征弁護士は、テレビ朝日系で2009年8月11日放送の「スーパーモーニング」で、「不起訴なんてとんでもない」と反論した。その理由として、酒井法子容疑者の自宅から覚せい剤が明らかに見つかり、ストローからのDNA鑑定結果も出ているため、所持と使用の両方の事実から裏付けられることなどを挙げている。そして、初犯などを考慮すると、懲役1~2年、執行猶予3~4年となりうるとしている。
また、サンケイスポーツの11日付記事によると、板倉宏日大名誉教授(刑法)は、「所持では必ず起訴されると思う」とコメントした。理由は、覚せい剤所持やDNA鑑定結果があり、酒井容疑者も自供していることだという。量刑も、大澤弁護士とほぼ同じ見方だ。
ただ、検察出身でも、元最高検検事の土本武司白鴎大教授は、起訴は難しい可能性があると、違った見方を示す。
「所持が極めて微量で、尿鑑定ができない。そして、初犯であることを考えると、起訴猶予の線になることが考えられます。もう少し所持が多いケースでも、起訴猶予となっており、公平性の見地からもそうです。確かに、クスリの事件は、一般的には厳しく扱われています。しかし、否認されたら、公判を支えることはできないでしょう」
もっとも、メディアでは、酒井容疑者が数回では済まないぐらい使ったと夫が供述している、警視庁が毛髪鑑定などから使用頻度を調べている、などと報じられている。起訴については、今後の捜査の進展次第もあるかもしれない。