「ポップスの帝王」マイケル・ジャクソンさんの死が報じられて、1か月以上がたつ。マイケルさんを特集したテレビ番組はしばらく続いたし、CD・DVDの売り上げも伸ばした。そんな中、「マイケル・ジャクソン中毒」を引き起こしている人もいるそうだ。
夫が必死にムーンウォークやっている
精神科医の香山リカさんが2009年8月4日、毎日新聞に連載しているコラム「香山リカのココロの万華鏡」の中で、「ジャクソンさん中毒」として、その「症状」を取り上げている。
コラムによると、ある女性が「マイケル・ジャクソンさんのDVDを見ること」がやめられず、悩んでいるというのだ。マイケルさんが亡くなってからというもの、テレビでは繰り返し彼のパフォーマンスが映し出されていたために、DVDも欲しくなってしまった。DVD購入後は映像に釘付けだ。一日に何度も繰り返しみてしまうらしい。
香山さんは友人にもそれとなく聞いてみたところ、「ジャクソンさんの映像から目が離せない人」は、けっこういるらしいことがわかった。そして、自身もマイケルさんのDVD購入には迷っているとして、「見たら最後、私も『ジャクソンさん中毒』になりそうな予感がかなりしている」とおどけながら、文章を結んだ。
一方、読売新聞が運営する掲示板サイト「発言小町」でも、マイケルさんに関連して話題をさらった記事がある。それは2009年7月23日に投稿された「夫が毎日ムーンウォークを練習、困ってます」と題した記事だ。ムーンウォークとは、前を歩いているように見せながら、後ろにすべるようにして移動する不思議な動き。マイケルさんの代名詞的な、きわめて特徴的なパフォーマンスである。
さて、記事によると、投稿者が和室から何か異様な音がするために部屋をのぞいてみたところ、今年40歳をむかえる夫が必死にムーンウォークをやっているというのだ。旦那は昔からダンス好きだったのだが、「どう?出来てる?」と頻繁にたずねてくる。彼女の弁によると、ムーンウォークを覚えてどうするのか、苦笑する毎日で、どう接したらよいだろうかとなげかけたのだった。
「見ていても飽きることがありません」
これに対して、話題が話題だけに「思わず笑いました」という微笑ましい回答が多かった。中には、「うちは息子です。受験生だというのに全く…」「うちは、小学1年の娘がマイケルの踊りをしまくって困ってます」「おそらく、日本全国でムーンウォークに挑戦する男性や男児が大量発生中だと思われます」などといった書き込みもある。あの不思議な動きが気に入っている子供たちも多いようだ。
なぜマイケルさんのダンスは世代を問わず、多くの人を惹きつけているのか――。音楽評論家の加藤普さんはその魅力について、「未だに彼以上に踊れるダンサーはいないだろう」として、こう話す。
「彼のダンス・パフォーマンスは革新的でした。これまでに基本とされていたダンスの動きではなく、まるで新しかったのですから。オリジナリティのある振り付けはクオリティも高く、しかも観客の期待をいい意味で裏切る動きをしていく。体のキレもいいし、力強い。見ていても飽きることがありません」
とりわけムーンウォークは、重力の動きに反するかのような、日常とは全くかけ離れた動きをする。「それだけに、一度見れば虜になってしまう気持ちもわからないでもないですね。ついつい触発されて、やってみてしまう。もっとも、太ももの後ろあたりには負担がかかるので、注意が必要でしょうか(笑)」
なお、オリコンの発表(2009年7月22日)によると、マイケルさん急逝後の関連CD・DVD売上は14.4億円に到達している。この時点では、DVDランキング・ミュージック部門のトップ3には、マイケルさんのDVD「ライヴ・イン・ブカレスト」「ビデオ・グレイテスト・ヒッツ~ヒストリー」「ナンバーワンズ」が独占した。トップ20位以内にも、実に7作品がランクしていたという。