25年にわたって100円の「ワンコイン運賃」を続けてきた長崎の路面電車が、ついに値上げに踏み切ることになった。利用者数の減少が続くなか、およそ30年ぶりに赤字に転落することが確実になったことを受けての措置だ。懐具合が厳しい路面電車は、長崎だけではない様子なのだが、路面電車の特徴を見直す動きもあり、全国の路面電車にとっては「正念場」とも言えそうだ。
全国一安い大人100円の運賃を120円に引き上げ
長崎市で路面電車を運行する長崎電気軌道は2009年8月3日、全線均一運賃としては全国一安い大人100円の運賃を120円に引き上げる、と発表した。九州運輸局の認可が下り次第、早ければ10月1日に値上げする。値上げは1984年6月に90円から100円に引き上げて以来25年ぶりだが、全国最低運賃は維持される。
同社によると、09年度決算では、当期損失約1億5800億円を計上する見通しで、1970年以来、およそ30年ぶりの赤字に転落する見通しだ。利用者からは、これまでは「100円でも、何だかんだいって黒字が出ている」という声も多かったが、これがついに覆された形だ。
同社では、
「少子高齢化で輸送人員が落ち込むなど、増収要因がありません。それに加えて、バリアフリー対応や新車購入などのコストが響きました」
と赤字の経緯を説明する。確かに同社の運輸収入は、ここ30年では94年度の18億9000万円をピークに減少傾向で、08年度には16億8000万円にまで落ち込んでいる。同社によると、今回の値上げで、赤字幅を約1600万円にまで圧縮できる見通しだ。