「『何か変』が訴えるものがある」
とはいえ、大会会長の森岡さんは、無音盆踊りが、苦情を気にせずに踊りを楽しめるモデルケースになれば、と考えている。
踊り手に感想を聞いたところ、「曲が聞こえているので、まったく違和感がない」とのことだった。しかし、見物していた人からは、「寂しいね」「何か変」という声が上がった。これに対し、森岡さんは、こう言う。
「例のないことですので、いきなりうまくいくとは思いませんでした。ただ、踊り手が何百人にもなったとき、この『変』が訴えるものがあるとも感じました。例えば、炭坑節で手を叩く音が不思議に聞こえたり、草履の音が静かな盆踊りの中で違った音色になったりということです」
また、見物の人も楽しめるには、踊り手と途中で入れ替えることも案だという。さらに、FM電波を飛ばす機械を複合的に使って民踊と同時にポップスも流すなど、若者も楽しめるようなこともできないか考えている。
夏祭りのイベント委員長の米穀販売業、月東(がっとう)由典さん(34)も、「最初は不安があった」というものの、手応えを感じているという。
「草履ではなく、カランカランと音がする下駄でもいいんじゃないかと思っています。完全に無音ではなく、音を微かに流すようにすれば、曲も分かるでしょう。また、盆踊りの最中でも、告知などをアナウンスできます。実際、迷子が出たときに利用できました」
大会会長の森岡さんは、期待を込めてこう語る。
「祭りでは、自分でラジオを持ってくる人もいました。また、わざわざ遠くから参加した人もあり、子どもたちも面白がっていました。ネット上のご意見は、ありがたいアドバイスだと思っています。これからは、クイズとか仕掛けるなどして、いろんなことの可能性を試したいですね」