全国各地で作られている地元ビール、「地ビール」は不況にもかかわらず順調に売り上げを伸ばしている。やや割高というハンデはあるが、「味」に惚れ込んだ固定ファンに支えられているという。
2008年「地ビール市場規模」は334億400万円
「地ビール」は1994年の酒税法改正で、地域密着型の小規模醸造ビール会社として全国に広がった。たとえば、岩手県の「銀河高原ビール」や栃木県の「那須高原ビール」、神奈川県の「さがみビール」「横浜ビール」などだ。330mlの瓶入りで価格はおおむね400円。350mlの缶入りは300円程度で販売されている。もっとも、メーカーによってはそれ以上の値をつけているところもある。
最近では不況下とあって、価格の安い発泡酒や第3のビールが注目を集めている。とりわけ話題になったのは、09年6月に発表されたサントリーのプライベートブランド(PB)の登場だ。1本100~123円という価格のインパクトは大きい。それに比べれば、「地ビール」は割高だ。
にもかかわらず、日本地ビール協会がまとめた「地ビール市場規模推移」では、2003年の158億3200万円から、2008年には334億400万円と順調に成長しているようだ。
「銀河高原ビール」を手がけている東日本沢内総合開発の場合、08年10月~09年3月の出荷量は前年同期比112%。また、09年6月の売上高は前年同月比102.9%だった。担当者は、「最近では首都圏のスーパーの店頭に並べられる機会、場所が増えたことが挙げられると思います。売れ行きがよいのは缶(300円程度)の方です」と話す。
いいところと、そうでないところに2極化
もっとも、日本地ビール協会の会長・小田良司さんによると、地ビール人気はここ10年続いており、20代~30代・40代が支えているという。地ビールの楽しみ方は、居酒屋で一口目に飲む1杯とは違う。
「地ビールは、それぞれの香りが全然違うのが特徴です。たとえるなら、ワインの香りが一つ一つ違い、それを楽しむようなものでしょうか。地ビールファンにとっては、多数の地ビールの中から、自らの気に入るものを探し出すのが醍醐味です」
実際、地ビールや世界各国のビールを集めるイベント「ジャパン・ビアフェスティバル」は1998年の開催当初は800人の集客しかなかったのが、今では2万人近くが詰めかける一大イベントとなっている。地ビールメーカーは、こうした固定ファンにも支えられている。前出の東日本沢内総合開発も「国産のメーカーがちょっとずつ支持されているように感じています。価格がちょっぴり高くても、味が確か、美味しいと選ばれているようです」と話す。
ただし、地ビールメーカーすべてが好調というわけではないようだ。「三次ベッケンビール」の製造・販売で知られる、広島県三次(みよし)市の地ビールメーカー・三次麦酒は2009年7月12日、休業を発表した。
前出の日本地ビール協会・小田さんによると、三次麦酒の場合、併設するレストラン経営が悪化した例外的なケースだとしながらも、「地ビールメーカーは2極化している」とも指摘する。顧客がつき始めているメーカーはいち早くネット販売などにも力を入れて売り上げを伸ばしている一方、そうした取り組みから乗り遅れた製造元の中には、売り上げを伸ばせずにいるところもある、と指摘している。