百貨店各社が不況脱出の糸口を見出そうと、低価格帯の商品を相次ぎテコ入れしている。百貨店のプライベート・ブランド(PB)といえば、従来は「高級感」が売り物だったが、そごう・西武百貨店を傘下に持つミレニアムリテイリングは2009年秋から低価格のPBファッションを売り出すと発表。西武と高島屋は、低価格ファッションブランドの「ユニクロ」を都心部の店舗にテナントとして誘致する方向だ。
製品企画から製造方法まで自社で管理する「製造小売り」
ミレニアムは09年7月24日に東京都内で新たなPB製品の発表会を開いた。主力の婦人服では、有名デザイナーの田山淳朗氏と提携。中国に200の協力工場を持つアパレルメーカーとも協力し、製品企画から製造方法まで自社で管理する製造小売り(SPA)の手法を徹底する。デザイン性と低価格を両立させ、「低価格=ダサイ」という固定観念を払拭するという。
婦人ジャケットの場合、中心価格帯は1万2000円。2万6000円前後とされる百貨店の婦人ジャケットの中心価格帯を大幅に下回る。安く仕入れる代わりに製品の完全買い取りを実施することでコストの大幅削減が可能になるといい、松本隆取締役は「価格をメーカー品の6割程度に抑え、店全体の売り上げを伸ばす起爆剤としての役割を期待したい」と力を込めた。
新たなPBは「リミテッド エディション」と名付け、婦人服のほか、紳士服、子供服、インテリア、スポーツの5分野で展開、初年度50億円の売上高を目指す。
一方、低価格と品質の良さを兼ね備えたヒット商品で快進撃を続けるユニクロをテナント誘致する動きも目立ってきた。
「ファストファッション」人気無視できなくなる
高島屋は堺店(大阪府堺市)に続き、新宿店(東京都渋谷区)にもユニクロを出店する方向で調整を進めている。西武百貨店も東戸塚店(横浜市戸塚区)に今秋、初めて誘致するほか、大丸と松坂屋を傘下に持つJ・フロントリテイリング(JFR)もユニクロの出店に前向きな姿勢をみせる。
これまで百貨店業界では「ユニクロの戦略とは相容れない」(三越伊勢丹ホールディングス)との声が多かったが、顧客の低価格志向が強まる中、ユニクロや「H&M」などいわゆるファストファッション人気が無視できなくなっている。JFR傘下の大丸梅田店(大阪市北区)に今春、紳士服チェーンのはるやま商事がテナントとして出店し、集客増に成功したように、かつては「禁じ手」とされた対策も今ではめずらしくない。
全国百貨店の09年1~6月の売上高は前年同期比11%減と、半期ベースで初めて2ケタ減となるなど業界の危機感は強まっている。「ユニクロ」への対抗か、便乗かを含め、各社の苦悩が続く。