「社長は部下を信じ切れずにいた」 カブコムは「ブラック企業」の典型か

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役職員を精神的にコントロール

   このメールは、2回目のTOBが公表される7時間前にあたる、07年11月14日の10時1分に「【取扱注意】本日17:00公表予定の重要事実について」というタイトルで全社員向けに送信されたもので、メール冒頭には

「インサイダー情報につき取り扱い注意(各位を信頼し準備態勢に重きを置くため早めの周知をします)」

とあり、

「三菱東京UFJ銀行(BTMU)により当社株式の友好的TOB(40%→50%超)が行われます」
「50%超保有と一目で分かる子会社化するためのTOB」
「今回案件は頭取以下BTMUに置けるTOPダウン指示案件でもあり従来のようなヌルヌル感の協業態勢は整理/一掃」

と、持ち株比率やTOBの目的まで記されている。報告書によると、この社員は14時19分に斎藤社長のメールを読み「なんら躊躇することなく、当社内にあったデモ用の携帯電話を用いて」犯行に及んだという。

   このメール文化の背景として報告書が指摘するのは、社長が部下を信頼しない傾向で、社長と社員との間の信頼関係が崩壊していたこともうかがえる。

「こうしたメール文化は、リアルの世界で構築された会社の組織(とりわけ部長等の中間管理職の役割)を無機能化させ、すべての役職員が社長と直に繋がっているといった企業風土を作り出していた」
「一言で言えば、社長は部下を信じ切れずにいた。そのため、社長は社内(時にはアフター・ファイブ)の出来事をすべて掌握したいという思いが強く、これがメール文化を生み出し、ひいては管理される役職員の側にも、社長の顔色や社長の評価を気にする風潮をもたらしていた。時折、社長は、他の役職員の面前であからさまに役職員を叱り付けたり、アフター・ファイブにおける同僚との行動を承知していることを匂わせたりすることによって、やや過剰に役職員を精神的にコントロールしていたが、このことは、メール文化と相まって、疑心暗鬼に陥る役職員を生み出していた」
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