タダで泊まれて109円返金 「会員制」商法が人気

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   マイナス109円の宿泊プランが話題だ。マイナスというのもちょっと分かりにくいが、宿泊料をタダにする上に、109円返金するというのである。もちろん毎日この値段で営業しているわけではないが、旅館業界の苦しささがうかがえると指摘する専門家もいる。

最高4万8000円がマイナス109円に

   全国の宿泊施設を案内している宿泊予約サイト「トクー!トラベル」。その中にある「1泊109円あげちゃう! マイナストクー!市」では、1万円以上はかかる宿泊費をタダにして、その上109円を返すというプランがある。ちなみに、109円とは「トクー」にかけている。

   このプランに申し込めるのは、プレミアム会員(月額440円)のみ。このサービスを目当てに、会員登録者数は続々と増えているそうだ。現在90万人の会員がいる。

   該当のページにはたとえば、愛知県・笹戸温泉「紫翠閣 とうふや」の2食つき2万4000円のプラン、岐阜県・新平湯温「泉奥飛騨温泉郷 和風旅館 岐山」の素泊まり2万4000円のプラン、神奈川県・箱根芦ノ湖「箱根宿 夕霧荘」の素泊まり1万4700円のプランがいずれもマイナス109円となる。これまでには最高4万8000円のプランがマイナス109円になったこともあるという。

   このサービスを開始したのは2009年3月。サイトを運営する「クーコム」の代表・西村恵治さんによれば、こうした手法を取り入れたのは「景気が悪化し、旅館の客足が遠のいているところに、料金の値下げ以上の取り組みを企画した」と説明する。なお、同社では6年前から1泊109円のプランも提供していた。

比較的健闘しているのは安く、サービスがよい旅館

   「マイナス109円」のプランは常時30件近く用意している。そして、これらのプランは、旅館の稼働率の低い平日などに設定されている。利益を生まない空室を利用して、PRしようというわけだ。西村さんによると、人気のある旅館の場合、倍率は200~300倍で抽選となる。また、何千ものアクセスが個別ページに集中するのは、旅館側にとってメリットでもある。抽選に外れても、その旅館に宿泊を希望するケースも出てくるからだ。

「サイト内では、クチコミと採点を書き込めるようにしています。旅館の場合、クチコミが何より大事だと考えています。採点も取り入れており、5点満点のうち平均4点以上が目安となっているようです。ちなみに、『マイナス109円』で宿泊したお客さんは、たいてい高評価を書き込んでいます」

   こうして、書き込みや評価を見た人が新たな宿泊客となる、好循環も期待できるようだ。観光業に詳しい船井総合研究所のチーフコンサルタント・大坪敬史さんは、「小規模の宿泊施設など、予算の関係で販促をあまりかけられない旅館では効果的でしょう」と指摘する。

   くわえて、集客が苦しい旅館側としても、お客さんの取り込みには力を入れたいところだ。実際、ある旅館関係者は「高速道路料金が1000円になっても、宿泊客は少ない。財布のひもは依然として固い」と嘆く。一方、大坪さんも「高速インターから30分以内の立地条件にある旅館は好調ですが、それ以外となると定員稼働率も低いようです。また、比較的健闘しているのは安く、サービスがよい旅館。単価の高いところは苦しい」とする。

   大坪さんは、「本来ならば、こうした方法を使わずとも部屋を埋められるのがベストなのですが、そうせざるを得ないところに、旅館業界の苦しさがうかがえます」とも話していた。

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