比較的健闘しているのは安く、サービスがよい旅館
「マイナス109円」のプランは常時30件近く用意している。そして、これらのプランは、旅館の稼働率の低い平日などに設定されている。利益を生まない空室を利用して、PRしようというわけだ。西村さんによると、人気のある旅館の場合、倍率は200~300倍で抽選となる。また、何千ものアクセスが個別ページに集中するのは、旅館側にとってメリットでもある。抽選に外れても、その旅館に宿泊を希望するケースも出てくるからだ。
「サイト内では、クチコミと採点を書き込めるようにしています。旅館の場合、クチコミが何より大事だと考えています。採点も取り入れており、5点満点のうち平均4点以上が目安となっているようです。ちなみに、『マイナス109円』で宿泊したお客さんは、たいてい高評価を書き込んでいます」
こうして、書き込みや評価を見た人が新たな宿泊客となる、好循環も期待できるようだ。観光業に詳しい船井総合研究所のチーフコンサルタント・大坪敬史さんは、「小規模の宿泊施設など、予算の関係で販促をあまりかけられない旅館では効果的でしょう」と指摘する。
くわえて、集客が苦しい旅館側としても、お客さんの取り込みには力を入れたいところだ。実際、ある旅館関係者は「高速道路料金が1000円になっても、宿泊客は少ない。財布のひもは依然として固い」と嘆く。一方、大坪さんも「高速インターから30分以内の立地条件にある旅館は好調ですが、それ以外となると定員稼働率も低いようです。また、比較的健闘しているのは安く、サービスがよい旅館。単価の高いところは苦しい」とする。
大坪さんは、「本来ならば、こうした方法を使わずとも部屋を埋められるのがベストなのですが、そうせざるを得ないところに、旅館業界の苦しさがうかがえます」とも話していた。